[海外動向]

米国で浸透するSNSのビジネス利用─サービス品質を高め、新規顧客も開拓

ネット技術8つの最前線 Part4

2009年8月20日(木)山谷 正己(米Just Skill 社長)

SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は2003年ごろから若者の間で爆発的に普及してきた。この動きにビジネス界は当初、「SNSは若者たちの社交の場」と高をくくっていた。ところが近年、SNSを業務に利用する企業が急激に増えてきた。狙いは、顧客サービスの品質向上や新規顧客の開拓だ。

利用実態
ビジネスパーソンの5割が高い頻度でSNSを業務に利用

Network World誌は2009年1月、アメリカのビジネスパーソン583人を対象に、SNSの利用調査を実施した。それによると業務目的で「毎日」利用している人は20%に達し、「週に数回」使っている人の30%を加えると、回答者の実に半数が高い頻度でSNSを使い込んでいる実態が浮き彫りになった。

同じ調査から、どのSNSがビジネスパーソンに浸透しているかも明らかになった。週に数回以上SNSを使っているヘビーユーザーのうちLinkedInの利用者は63%、Facebookの利用者は44%だった(複数回答あり)。

LinkedInのアカウントを持つ人は世界に約3800万人で、中でもITベンチャーがひしめく米国シリコンバレーで活動するビジネスパーソンにはかなり浸透しており、この地での人脈を拡充するうえで不可欠のサービスになっている。実は筆者もユーザーの1人で、人脈づくりの道具として重宝している。

一方のFacebookは、2億人規模のユーザー数を誇る世界最大級のSNSだ。アメリカでは高校生のほどんとがFacebookを使って、遊びから勉強までさまざまな情報を学友とやり取りしている。Facebook内で見ず知らずの人と友人になるなど、好奇心旺盛な高校生ならではの活動も盛んだ。こうして培われた人脈(リンク)は、彼ら彼女らが社会に出てからの財産になり得る。

ITベンダーの間では、Facebookの人脈をビジネスに生かしやすくする技術の開発が加速している。例えばCRM(顧客関係管理)のSalesforce.comは2008年末、同社のSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)とFacebookとの間でデータを連携させるコネクタを開発した。これを使うと、Facebookに蓄積してきた友人の情報をSalaesforce.comから利用できる。学生時代に築いた人脈とCRMを連動させれば、今自分が担当する新製品のプロモーションなどにおける商談や受注活動を、潜在顧客に最初から一歩踏み込んだ形で進められる。

Facebookは2007年にSNSのAPIを公開。現在、Salesforce.comのようにFacebookとの連携機能の開発に取り組むエンジニアは世界に約64万人もいるという。

ユーザー企業動向
サービスの充実や顧客開拓で活用が広がる

Facebookのように一般に広くサービス提供されている「パブリックSNS」は、ビジネス向きではないとする風潮が少なからずあった。しかし、ここにきてそうした考えは払拭されつつある。

例えば、大手デパートのSearsはFacebook上に同名のアカウント(www.facebook.com/sears)を持ち、10ドルの割引クーポンの提供や各種のイベントの告知に利用している。Searsのアカウントから発せられる情報をウォッチしている人は2009年6月末時点で2万4573人いる。毎日、大量に送り付けられる販促メールに飽き飽きしている消費者は多いが、SNSの世界ではユーザーが自ら貪欲に情報収集する傾向にあり、集客やイベント告知の成果を上げる新しいマーケティングチャネルとして企業の期待が高まっている。

女性用衣服販売のMadewellもFacebookを活用する企業の1社だ。Searsと同じく、Facebook内で商品の割引クーポンを提供している。自社のオフィシャルサイトで割引クーポンを提供する手もあるが、顧客が日常的に利用しているFacebookにアカウントを設けたほうが集客効果を高められる可能性がある。

Facebookを集客に結びつけようとする企業は、SearsやMadewellだけではない。ある調査では、全国規模でチェーン展開するアメリカの主要小売業100社のうち59社が、Facebookをマーケティングに活用しているという。

ここにきてマイクロブログのTwitterも、顧客との関係強化を目論む企業の間で脚光を浴びつつある。表4-1に示す通り、グーグルやシスコシステムズ、デルといった名立たる企業が、顧客サポートやサービスの充実を目的にTwitterの利用を開始している。その先に、既存顧客との関係強化や新たな関係の構築を見据えている。

表4-1 顧客サービスやサポートにTwitterを活用している企業の例
アカウント名 運営企業/業種・業態 フォロワーの数(2009年6月末現在) 用途
Cisco Systems CiscoSystems/通信機器メーカー 9940 主に製品サポート情報の提供
DellOutlet Dell/ハードウェアメーカー 74万5722 顧客からの問い合せ対応やオンライン購入者向けの割引コードなどの提供
googleapps Google/Webの各種サービス 1万1619 Googleの開発プラットフォーム・サービス「Google Apps」に関する情報提供
JetBlue JetBlue Airways/格安航空サービス 76万7725 顧客からの問い合せ対応やサービス案内、運行情報などの提供
Mosso Rackspace US/データセンター 4529 データセンターに関するインフラストラクチャ・サービスのサポート情報の提供
skypejapan Skype愛好家 2万3326 最新ニュースやサポート情報の提供。愛好家によるもので、運営会社のSkypeは関与していない
WholeFoods Whole Foods Market/健康志向スーパーマーケット 89万4012 顧客からの問い合せ対応やおすすめ食品の紹介

一般に個人ユーザーがTwitterを利用する場合、ニックネームや本名をアカウント名として使う。企業はニックネームや本名の代わりに製品名やサービス名をアカウント名に使用。製品/サービスに関する最新情報をニュース速報のように提供したり、Twitterのユーザーである消費者から問い合わせを受け付けたりしている(本誌注:Twitterの詳しい利用例は[node:1118,title="Part1",unavailable="Part1"]を参照)。

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