[BPM ビジネスプロセス革新実践ガイド]

BPMを理解する─筋肉質で俊敏な企業になるために(第2章 完結編)

2009年8月21日(金)ビジネスプラットフォーム革新協議会(BPIA)

「2. BPMとは」(第2章中編)で言及したように、BPMでは情報システムの活用が大きな役割を果たします。BPMはその骨格をなす「可視化」の部分、つまりモデルをどのように作るかといった部分で人に依存するところも多く、すべてを情報システム化できるわけではありません。とはいえ、BPMのシステム化(BPMシステム)においては標準化したプロセスをシステム化し、さらにプロセスを相互に連携させることが可能です。これによりプロセス実行の効率化を図ることができます。

5.BPMと情報システム

ワークフローもBPMのシステム化の1つです。ワークフローとは、「全体的もしくは部分的にコンピュータを利用して、ビジネスプロセスを促進あるいは自動化すること」(注:ワークフロー関連仕様の標準化団体であるWfMC(Workflow Management Coalition)の定義)です。ワークフローシステムとも呼ばれます。

BPMシステムとワークフローを厳密に区別することは難しいのですが、ワークフローは「稟議書や交通費の精算など、複数人の間で書類を回覧して承認をもらう人間系の承認の仕組み」をシステムに載せることに主眼を置きます。一方、BPMシステムは「受発注や在庫管理など、特定の人がしている業務自体をシステム化して連携させる」ことに主眼が置かれています。この両者を組み合わせて活用する場合もあります。

なお一般的にBPMシステムと言った場合、ワークフローを包含したものであることを追記しておきます。

ここで1つ明記しておきますが、BPMシステムとは現在の業務を単にシステム化するものではありません。「標準化による効果」の項でも述べましたが、単なるシステム化の場合、使用頻度の高い低いにかかわらず似たようなシステムが乱立し、開発・保守にコストがかかる一方、システムが有効に利用されないということも起こります。ビジネスプロセスとして整理し「標準化」したものを対象とすることで初めて、BPMシステムは大きな効果を発揮できるようになります。

BPMシステムについては第5章([node:1178,title="前編",unavailable="前編"]、[node:1179,title="後編",unavailable="後編"])で詳述します。

6.継続した業務改善のために:「評価とモニタリング」

本章の最後では、BPMの「継続した業務改善」という側面から非常に重要になる「評価とモニタリング」について述べたいと思います。ビジネスプロセスを構築あるいは改善・変更した効果を「評価」するためには、尺度を持ってなんらかの効果を測る必要があります。「定性的」な評価のみではBPMに対する投資対効果を見ることができません。これでは、今後企業としてBPMを実施するかどうかの判断ができないことになります。「定量的」な尺度が必要です。例えば「クレーム処理件数の減少」「実地棚卸と帳簿数量との乖離の減少」「帳簿の異常値の発生頻度の減少」などが考えられます。これは各社の事情を踏まえて決めて頂ければ結構です。

せっかくすばらしいビジネスプロセスを構築しても、正しく運用されなければ業務の改善にはつながりません。ビジネスプロセスが設計どおりに運用されているか、その結果として想定した効果が出ているかを常にモニタリングし、評価しておく必要があるのです。

このための有効となる考え方の1つにビジネスインテリジェンス(BI)があります。またビジネスアクティビティーモニタリング(BAM)という考え方では、ビジネスプロセスの状況を常にモニタリングします。これによりビジネスプロセスを運用しながら問題点を発見し解決することも可能になります。

ここで取り上げるBIとBAMは基本的にシステムから収集したデータを対象として扱います。もちろん「評価とモニタリング」を定性的な効果を測る場合のように手作業で実施することもあります。しかしここでは、「評価とモニタリング」とBPMの効果を「定量的」に測ることの重要性に鑑み、皆さんの企業ではシステム化されて「定量化」できるデータが存在するという前提でお話を進めて行きます。なおここでのシステムというのは、必ずしもBPMのためのアプリケーションやツールによるシステムではなく、必要なデータを収集できるシステム(一連の作業の仕組み)が存在することを指しています。

BIとBAMを以下に簡単に説明します。

  • BI:企業活動に係るデータを定期的に収集し、収集されたデータを様々な観点から分析して企業戦略・戦術の決定に役立てること
  • BAM:ビジネスプロセスの遂行に係るデータをリアルタイムで収集し、ビジネスプロセス遂行上の問題があればそれを検知・通知してその結果として問題の解消に寄与すること

BIはまずBPMの効果の測定に役立ちます。ビジネスプロセスの効率性の尺度をキー・パフォーマンス・インディケータ(KPI)という形で捉えて測ります。例えば「商品回転率」や「納品リードタイム」などです。

さらに様々なKPIを分析することでビジネスプロセスの問題箇所や改善可能な箇所を明確にすることができます。例えば「受注」のサブプロセスであれば曜日別受注数、時間帯別受注数、またそれらの推移の傾向を分析します。これにより「受注」に必要なリソースの最適配分を適宜設定することが可能になります。シミュレーションのデータにとどまらず、実際の企業活動から得られたKPIをBPMの運用局面に生かすことでその効果を最大化することが可能となります。ここでの知見からビジネスプロセスを見直して、さらに効果的なBPMへとつなげることもできます。

さらにBAMは、ビジネスプロセス自体の運用状況を常時把握できるという点でBPMの運用に非常に効果的です。BPMは業務を改善し運用するための仕組みです。しかし、問題の発生を検知する仕組みがなければBPMの正しい運用を担保することはできません。また、問題が多く発生するなら、それをBPMにフィードバックすることが必要になります。

例えば「注文処理」のビジネスプロセスにおいて「納期遅れが発生する」リスクを防止するために「出荷」のリードタイムをモニタリングしているとします。BAMによって納期遅れが起きそうな「出荷」を検知して対策を取ることは可能です。しかし、こういった局面が多発するのは、「出荷」のサブプロセス自身に問題があると考えられます。これを改善するためにさらなるBPMによる業務改善のPDCAサイクルを回す必要が出てくるわけです。

このようにBPMの「評価とモニタリング」においてはBIとBAMを組み合わせて運用してゆくことが非常に有効です。今後の継続的なBPMの実現には非常に有効な考え方と言えます。

本章ではビジネスプロセスとBPMを理解していただき、その効果を業務改善とリスクマネジメントの両面からみてきました。そして継続的なBPMを可能にするための「評価とモニタリング」の重要性についても理解していただきました。

次章では読者皆様の企業について具体的な診断を実施します。

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