アプリケーションサーバーが仮想環境の管理機能を持つ─。日立製作所のアプリケーション開発・実行基盤「Cosminexus」の最新版の「V8.5」の特徴を一言で示すとこうなる。これはどういうことなのか。なぜ同じ日立の「JP1」ではないのか。日立の担当者に聞いた。
ハードウェアの導入費用や設置スペース、消費電力などの削減を目的に、仮想化ソフトを使って物理サーバーを統合・集約するケースが増えている。
だが日立によると、そのメリットを十分に享受するには、まだ課題があるという。「仮想化ソフトやその管理ツールがサポートするのはOSレイヤーまで。仮想環境で稼働する業務アプリケーションのためのネットワークやストレージ、負荷分散の設定は、人手で行う必要がある」(同社第2AP基盤ソフト設計部主任技師の越智 康氏)。
クラスタ化した複数の仮想サーバー上で業務アプリケーションを稼働させる場合にも、人手による設定や管理が必要になる。仮想化ソフトは、業務アプリケーションの稼働までは関知しないからだ。「仮想化は有用な仕組みだが、アプリケーションの視点から見れば開発時の各種設定や運用管理を複雑にしてしまう問題がある」(同)。
業務アプリ単位で仮想サーバーを統合管理
そこで日立は、Cosminexusの中核製品であるアプリケーションサーバー「uCosminexus Application Server」に、「仮想サーバマネージャ」という機能を盛り込んだ(図)。これは業務アプリケーションとそれが稼働する複数の仮想サーバーを、「管理ユニット」と呼ぶ単位で統合管理する機能だ。
管理ユニットの実体は、アプリケーションサーバーのマスターイメージやアプリケーション本体、仮想サーバーの起動数制限などの運用ルールなどで構成するファイル群。アプリケーションの担当者が、仮想サーバマネージャに管理ユニットを登録してデプロイや変更の指示をすると、仮想サーバマネージャがVMwareの仮想サーバー管理ツー ル「VMware v- Center Server」に接続。仮想サーバーの設定やアプリケーションのインストール、ロードバランサの設定などを自動実行する仕組みである。これにより前述の課題を解消し、仮想サーバーの設定時間を短縮できる。
システム運用担当者ではなくアプリ運用担当者にアピール
「それにしても、なぜこうした機能をアプリケーションサーバーに?同社の運用管理ソフトであるJP1に実装する方が、適切では?」。こんな疑問を持つ読者もいるかもしれない。だがJP1を使うのは、ハードウェアやOS、DBといったインフラの管理者が中心。アプリケーションの開発や保守を担うSEとは別であるケースが多い。
そのため日立はアプリケーション担当のSEが扱うアプリケーションサーバーに機能を盛り込むことにした。「JP1と機能的に被ることがあっても、アプリケーションサーバー側に管理機能を搭載するのが適切と考えた」(同)。
対象とする仮想化ソフトは、現在はVMwareだが、今後は同社の「Vir-tage」やマイクロソフトの「Hyper-V」向けも用意する計画だ。仮想サーバマネージャが利用できるuCosminexus Application Server Enterpriseの価格は231万円から。 (鳥越)
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