会計システムと、オンライン販売やゴルフ場予約といった業務システムの刷新を並行して進めるゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)。今回は、同社が先行してスタートさせた会計システム調達フェーズに焦点を当てる。ERPを用いて会計システムを再構築する「MSプロジェクト」である。
ベンダー選定前に要件を決定
業務システムと会計システムが連携しないため、人手による入力作業が介在すること。そのため、システム上のデータ精度が低いこと。そうした問題を解消しようと、GDOがMSプロジェクトを立ち上げたのは、2009年6月のことだった。
基本構想の立案を経て2009年10月、プロジェクトメンバーは業務フローの現状(As Is)を洗い出し、あるべき姿(To Be)を設定する「業務設計」に着手した。現場の担当者へのヒアリングを繰り返し、社内業務を徹底調査。業務をTo Beにもっていくための課題をあぶり出す作業である。
GDO社内で会計処理が発生するのは主に、ゴルフ用品のオンライン販売、ゴルフ場予約、広告という3つの事業。As IsやTo Be調査はこれらすべてを対象にするだけに、「作業の複雑さや分量は並大抵ではなかった」(志賀智之IT戦略室長)。GDOはアビームコンサルティングの支援を得ながら、3事業の業務設計を1カ月足らずでやり遂げた。それだけではない。新システムの方針と要件まで一気に策定し、RFPに落とし込んだ。
RFPに記載した要件の数は、「4桁以上の勘定コードに対応できる」「ワンタイム得意先(編集部注:1回限り、あるいはまれにしか取り引きしない得意先)を登録できる」など約300に上った。
ベンダー選定前に要件を詰め切ったのには、ある腹づもりがあった。提案段階で、フィットアンドギャップ分析を済ませてしまおうというのだ。「通常、フィットアンドギャップ分析は製品決定後に実施するケースが多い。しかしそれでは、本当に自社の業務に合ったERPを選べない」(大日健CIO)という思いからだった。
このため、要件1つひとつについて、パッケージの標準機能で実現できるか、それともアドオン開発が必要なのかを記入する「評価シート」を作成。2009年11月半ばに開催した説明会で、候補ベンダー9社に配布し、提案書とともに提出してもらった。
第1次選考は、この評価シートに基づき実施した。要件を重要度に応じて重み付けしたうえで、各製品の充足度を点数化。合計点を比較していった。もちろん、デモやプレゼンも重要なポイントだった。実際、思わぬ番狂わせもあった。有力候補の1つだったベンダーが、早々に脱落したのだ。志賀室長は「最終選考まで残ると踏んでいた製品だったが、プレゼンがあまりに精彩を欠いていた」と振り返る。
こうした選考の結果、12月初旬にベンダー候補を9社から5社に絞った。各社にRFPを提示してから、わずか2週間後のことだった。
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