日本国内でCMOを設置している企業は3.9%? こんなショッキングな数字があります。さてさて、本当にこれでいいものなのか。今回は、そんなテーマで書いてみます。
日本の企業に今こそCMOを
昔、私が勤務していたある北米のIT企業に入ってきたCMOはとてもアグレッシブでユニークでした。アロハシャツを着て耳にはピアスといういでたちの彼はこう言いました。「今まで在籍した会社で数々の失敗をして来て、『どうしたらうまくいかないか』が私にはわかっています」。
このCMOは大きく旗を振りました。伝統を守ってずっと同じだった会社のロゴを変え、Webサイトを変え、キャッチフレーズを変え、すべてを新しく変えました。販売手法まで変えて、新しい主力製品が市場に投入されました。
今、私が懸念するのは、こういった全面的な刷新を1人の責任者が旗を振って行うことは今の日本企業では難しいのではないかということです。こういったトップダウン型の大きな変革は、CEOや社長が行うことはできても、マーケティングの部長には行えません。どうしても、社長の顔色をうかがってしまいます。宣伝部長も、工夫を凝らした広告展開ができたとしても、全社のコンセプトを変えたりはきっとできないでしょう。
現場で役割が細分化され、全体を束ねる人がいない状態でビジネスがそれなりに回っている会社が多いため、CMOの設置にまで至らないのかもしれませんし、年功序列で生涯勤め上げるタイプの企業では、旗を振れる人はうまくなじめないのかもしれません。
ちなみに、かのCMOは数年間で成果を示した後でこの会社を去り、また別の会社で改革を進めているようです。改革が必要な会社には、今こそ自ら率先して旗を振る行動力のあるCMOが必要なのだと思います。
●筆者プロフィール
加藤恭子(かとう きょうこ)
ビーコミ 代表取締役
日本マーケティング学会理事、サイバー大学客員講師
横浜市立大学卒。青山学院大学 大学院 国際政治経済学研究科 修士課程修了。IT系月刊誌やオンラインメディアでの記者・編集者を経て、B2BのIT企業でPR/マーケティングマネージャーを歴任。CRM企業の日本法人立ち上げにも参画。2006年6月、外資系ERPベンダーでのマーケティングマネジャーの職を辞し、個人事業としてビーコミュニケーションをスタート。2007年8月より株式会社ビーコミとして法人化、代表取締役として活動開始。複数企業のPR/マーケティング支援を行うほか、各種媒体で執筆活動や企業・団体向けに講演活動もしている。特にテクノロジー系企業の広報・マーケティングのコンサルティングやソーシャルメディアを活用したコミュニケーション活動を支援している。
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