[2014年、エンタープライズモバイル最新動向]

2014年、スマートデバイスの企業活用はセカンドステージへ

2014年4月4日(金)藤吉 栄二(野村総合研究所)

スマートデバイスを使って、業務プロセス改革に本格的に取り組む事例も登場し始めた。しかし、多くの企業では、メールやカレンダーの閲覧、商品カタログの閲覧といった用途に限られている。本稿では、企業におけるスマートデバイス活用のセカンドステージ(第二幕)に向けた、今後の展望を紹介する。

企業導入は30%台に突入、普及期へ

 スマートデバイスの企業導入が普及期に差し掛かっている。野村総合研究所(NRI)が2013年に実施した調査によると、業務目的でスマートデバイスを社員に貸与している企業の割合は、2013年にはスマートフォンは35.6%、タブレットは33%に達した(図表11)。

 一方、導入企業数の伸びは落ち着きをみせつつある。「1年以内に利用する」「2~3年以内に利用する予定がある」「情報収集段階にある」と回答した割合は前年のそれに比べると低い。つまり、すでにスマートデバイスを導入している企業と、そもそもスマートデバイスを必要としない企業のいずれかに色分けされつつある。これまでの推移を見る限り、将来的な導入率は50%前後になるだろう。

図表1:企業におけるスマートデバイスの導入状況

利用シーンは限定的。ワークスタイル改革の実現は道半ば

 さて、スマートデバイスの導入を終えた企業は、その機能を十分に使いこなせているのだろうか。調査では、デバイスの利用シーンも尋ねた。図表2はその結果である。主な用途は、音声通話とメール、カレンダーの閲覧。タブレットの場合は、商品カタログなどの営業資料の閲覧が加わる。

 これらはいずれも、情報系システムでの利用である。顧客情報の閲覧、商品の発注、申請の承認など、基幹システムを利用している割合はまだまだ小さい。同時期に、アメリカ、中国、西ドイツ、イギリスで実施した調査結果と比較すると、日本は活用の範囲が全体的に狭いのが分かる(図表2)。

 もちろん、メールやカレンダー、営業資料を確認できるだけでも十分に意義はある。これらの作業のために、わざわざ自席のPCまで戻る必要がなくなる。外出中にノートパソコンを広げるための場所を探す手間も省ける。モバイルでこなせる業務がより多くなれば、働き方の柔軟性はさらに増すだろう。

図表2:スマートデバイスの利用シーン

スマートデバイスで業務を完結

 スマートデバイスを本格活用する事例も登場している。大成建設や大林組は好例である。建築現場で施工確認作業をする際にタブレットを使う。ディスプレイ上に表示された図面を確認しながら、施工の進捗を確認する。工事現場で何らかの問題を発見したときは、内蔵カメラで該当箇所を撮影して、本部のシステムに送信する。報告書を作成するためにオフィスに戻らなくても済むようにした。

 営業・交渉業務やオフィス業務でもスマートデバイスを本格活用する動きが登場している。例えば、東京海上日動あんしん生命。生命保険の加入手続きをタブレット上で完結できる新システム「らくらく手続き」を2013年10月に導入した。加入意向確認書・申込書・告知書・口座振替依頼書などの書類をスマートデバイスで作成。入力内容を元に健康状態を審査し、顧客にその場で審査結果を通知する。これまでは、紙の書類を作成、郵送して、審査結果を待つ必要があった。

 北國銀行は、スマートデバイスをテコにワークスタイル改革に取り組んだ。2014年11月の本社移転にあわせて、バックオフィスを含めた従業員のPC2300台を、マイクロソフトのタブレット「Surface Pro」に置き換える。着脱可能な専用キーボードが付属しているため、入力作業はこれまで通りこなせる。会議や接客の場では、タブレットとして活用する。画面を相手に見せて、タッチ操作しながら会話する。スマートデバイス1台でオフィス内外のさまざまな局面に対応できる環境を構築する予定だ。

 同様の取り組みを目指す企業は増えている。スマートデバイスを導入した企業に、今後の取り組みを尋ねたところ、「ビジネスプロセスの見直し」を1位に挙げた。「ビジネスに直結するスマートデバイスの活用を考えたい」と考えていることがうかがえる(図表3)。スマートデバイスを使った業務改革の事例が増えてきたこと、消費者向けサービスで利便性を体験していることなども影響しているといえよう。

図表3:スマートフォン、タブレット導入企業の今後の取り組み
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