これまでの連載では、仮想デスクトップ(以下、VDI)を導入する際、知っておくべきポイントや検討ポイントを解説してきました。最終回は、VDIの未来の形である「仮想ワークスペース」を解説します。
VDIの次のステップとして、注目を集めそうなツールがあります。「仮想ワークスペース」です。OSや端末に依存せず、時間や場所に縛られず、業務に必要なツールを利用可能にする“クライアント環境の統合基盤”です。電話やビデオ/web会議、プレゼンス、社内SNS、デスクトップを仮想化。1つのスペースで利用できるようにします。
ビデオ会議や社内SNSの仮想化と言っても、ピンとこない読者もいるかもしれません。具体的には、各種アプリケーションをVDI上で利用できるようにします。また、デスクトップに依存せず、単独のアプリケーションでも利用可能にします(SaaS利用やWebアプリケーション化)。こうした取り組みを仮想化と呼んでいるのです。
ユーザーが仮想ワークスペースにアクセスすると、認証情報を元にポリシーが適用されます。この時、MDM(モバイルデバイス管理)、MAM(モバイルアプリケーション管理)、MCM(モバイルコンテンツ管理)といった技術が使われます。
仮想ワークスペースでは、ユーザーインタフェースは端末に応じて最適化されます。例えば、メールやブラウザに関しては、各種ネイティブ向けのアプリケーションを提供し、セキュリティの確保と、操作性の向上を図っています。
仮想ワークスペースは、VDIと比べて、より業務環境のモバイル化を目的としたソリューションとして提供されています。将来的には、クライアント環境の包括的なツールとなるでしょう。ヴイエムウェアの「Horizon Workspace」や、シトリックスの「XenMobile」など、VDIベンダーが売り出しています。
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ベンダーが仮想ワークスペースを提案する理由
ベンダーが仮想ワークスペースを提案する理由は2つあります。
1つは、デバイスの多様化です。昨今、スマートフォンやタブレットなど、優れたモバイル端末が登場するようになりました。これらは、業務システムのクライアント端末として十分実用に耐えうる性能を備えています。また、スマートデバイスの他にも、優れたデバイスが今後登場する可能性もあります。
課題はIT資産へのアクセスです。いくら優れたデバイスが登場しても、業務システムやデータにアクセスできなければ活用の幅は限られます。これまで企業のクライアント環境はPCを前提としてきました。しかし、PCとフィーチャーフォンの世界に再び戻ることはないでしょう。企業ITは多様なデバイスをサポートする必要があります。
仮想ワークスペースが登場したもう1つの理由は、ワークスタイルの多様化です。スマートデバイスやVDIの導入が進むと、オフィスだけではなく、自宅や外出先で業務をこなすケースが増えてくるでしょう。それ自体はもちろん、歓迎すべきです。
ただし、グループワークが減るわけではありません。業務を進める上では、不明点を問い合わせたり、定期的に打ち合わせたりすべき場面が少なからずあるでしょう。業務データやコミュニケーションツールがデバイスに依存していると不便です。「オフィスにいないから仕事ができない」「会社から貸与された機器がないから仕事ができない」では、業務に支障を来たし、ビジネス機会を失う恐れがあります。
つまり、これからのクライアント環境は、デバイスとワークスタイル、2つの多様化に対応する必要があります。そのためには、「端末を問わず」「物理的に距離がある状態」で、「オフィスと同様に業務をこなし」「密接にコミュニケーションを取る」という要件を満たす必要があるわけです。それで、仮想ワークスペースなのです。
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