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[市場動向]

バックエンドのIT化は一巡、顧客関係の独創的デザインが焦点に

経営xITの主戦場はどこか

2014年9月2日(火)川上 潤司(IT Leaders編集部)

テクノロジーの進化や世の変化に照らして考えた時、消費者や取引先と接する領域で斬新な価値を提供する“フロントエンド”が、より重要性を高めている。ITリーダーが念頭に置くべき主戦場を考える。

 多くの情報を持って取引の主導権を握り始めた顧客、グローバル規模の調達力でコスト競争を仕掛けてくる競合他社…。様々な事象への対峙に難儀する企業も少なくないが、さらにITの局面では今、大きな変革期を迎え、企業間の競争が熾烈さを増している。

 それは当然ながら、中長期展望で進路や戦い方を見極めるITリーダーに大きな課題となってのしかかる。

主戦場となる「エンゲージ」のためのシステム

 「変革期」を一言で表すなら、勝負の土俵が新しく形成されようとしていると言えるだろうか。

 IT部門がこれまで中心的に取り組んできたのは、「業務プロセスの合理化」。すでに現業部門で繰り広げられている業務を、より正確かつ効率的に進めるためにITを活用するアプローチである。財務会計や人事給与、販売管理、生産管理、営業支援といったものから始まり、SCM(サプライチェーン管理)やCRM(顧客関係管理)、ERP(企業資源計画)などに拡大、およそ考えられる範囲を塗りつぶしてきた。

 その時々に一定の成果を収めてきたとはいえ、多くの企業が同様の取り組みを重ね、今となっては各システムが決定的な競争優位性をもたらしているとは言い難い。大局的には「大半の企業において“バックエンド系”のIT化はすでに一巡した」と言える。

 もちろん、手放しでよいとはいかず、経年劣化に伴うリニューアルや時代に合わせた機能追加など、IT部門が対処すべき作業はあまたある。しかし一方、競争力強化の文脈で、最優先で取り組むべき領域がここ数年で忽然と現れてきているのだ。

 「テクノロジーを使って、例のないビジネスモデルや顧客体験を創り出す」──。歯が浮くような表現にも映りかねないが、世の変化がその実現を近づけようとしている。

 個々人に多機能なスマートデバイスが行き渡り、買い物や交友活動をはじめ生活に深く根ざして使われている。それは端的に言えば、どこで何をしたかのみならず感情までも推し量れる“ライフスタイルセンサー”の普及を意味する。人ばかりではない。生産設備や自動車、家電製品など、さまざまな機器にもセンサーが搭載され、種々のデータを発信する。他方、続々と生み出される多種多様なデータを効率的にさばき、リアルタイムに近い形で分析する技術も実用期を迎えている。

 例えばそれは、「コンテキスト(人やモノが今そこにいる(ある)ことの意味や他の事象との関係性)」に基づいてアクションを起こすビジネスを可能とする。ある空港に降り立ったら、日常的によく行くカフェチェーンからスマホにクーポンメールが届き、開けば、近隣店への地図ナビゲーションもある…。こうした取り組みはまだ序の口で、もっと洗練された対顧客戦略が考えられるだろう。

 先に触れたバックエンド系を「Systems of Record(SoR:取引の記録のためのシステム)」と表現するのに対し、新しい領域は「Systems of Engagement(SoE:顧客とのエンゲージメントのためのシステム)」と呼ばれたりする。エンゲージの意味するところは、顧客に感嘆とシンパシーを持って受け入れられる斬新な体験を提供し、ファンやお得意様になってもらうということ。このSoEこそが、まだ十分に切り拓かれておらず、これからの企業間競争の主戦場になると目されている。

図 エンゲージメント創出の知恵が競争力につながる。そこには、クラウド/ モバイル/ ソーシャル/ アナリティクスなど、多様な最新テクノロジーの応用が欠かせない
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顧客エンゲージメント / CS / SoE / バイモーダル / スマートデバイス

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バックエンドのIT化は一巡、顧客関係の独創的デザインが焦点にテクノロジーの進化や世の変化に照らして考えた時、消費者や取引先と接する領域で斬新な価値を提供する“フロントエンド”が、より重要性を高めている。ITリーダーが念頭に置くべき主戦場を考える。

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