IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を前提にした新たなアプリケーションによるビジネスモデル改革への期待が高まっている。そうした中、CDN(Contents Delivery Network)サービスを提供する米アカマイ・テクノジーズが、IoTのためのネットワーク環境の構築に力を入れている。IoT時代には、どんなネットワークが必要になるというのか。米本社のチーフストラテジストであるクリストファー・アレキサンダー(Kristofer Alexander)氏に聞いた。(聞き手は志度昌宏=IT Leaders編集)
−−IoT(Internet of Things:モノのインターネット)のためのネットワークが必要だと指摘している。IoTの何を問題視しているのか。
様々なデータソースがネットワークにつながっていく中で、これまでとは異なるインタラクション(相互作用)が複数、発生することだ。
IoTの時代になれば、様々な機器がつながることは既に指摘されている。従来の人が操作するコンピュータに加え、車や製造装置などの機械、センサーあるいは、それらで読み取れるバーコードやQRコードが付されたすべてのモノである。
しかし、重要なことは、これらがただつながるだけでなく、読み取った情報がやり取りされ、それに基づくインストラクション(命令)によって、新たな変化が生じる。そこでは、人よりも機械、機械よりもセンシングされたデータやインストラクションのほうが多数発生するのは明らかであり、そこに新たなインタラクションが発生する。
IoT環境で発生するインタラクションは、大きく3種ある。P2P(People to People)とP2M(People to Machine)、M2M(Machine to Machine)だ。アプリケーションで見れば、P2PはSkypeやText Messageなど、P2MはWebサイトやEC(Electric Commerce)サイトなど、そして、M2Mは、信号制御や電力制御などだ。
これらのうち最も大きな伸びが期待されるのがM2Mだ。だが、現在のインターネットはP2PやP2Mのアプリケーションを想定した環境整備やサービスが提供されているのが実状だ。
−−IoTのためのネットワークとしては何が必要になるのか。
5つのチャレンジがあると考えている。(1)コネクション、(2)メッセージング、(3)データのコレクションとストレージ、(4)制御とセキュリティ、(5)アナリティクスだ。
ネットワークにつながる機器の多様化が進めば、Wi-FiやBluetoothを含め様々な通信プロトコルを介したアクセスが増える。そうした中で、性能を維持しなければならないし、データをどこに蓄積するかも検討しなければならない。当然、機械などをターゲットにしたアタックも増えるだろう。これらの課題を解消していかなければ、IoTの世界はスケールしていかない。
−−アカマイはこれまで、CDN(Contents Delivery Network)の考え方を元に、データセンター間を結ぶことで、企業向けにWebアクセスやセキュリティを強化したネットワークサービスを提供している(関連記事『「Webでのユーザー体験がビジネスの成否決める」米Akamaiシニア・バイスプレジデント』)。IoTでも同じアプローチを採るのか。
よりネットワークの終端に近いところまでを含めたエンドツーエンドで最適化を図る手法を進めている。インターネットの標準プロトコルの1つであるTCP/IPは非効率であることは明らかだからだ。取り組みのいくつかは個別に発表済みだが、これらを組み合わせることで、例えば、家庭内に設置する無線LANルーターからデータセンターまでを統一したプロトコルで通信できるようになる。
具体的には、通信事業者用のソフトウェアと、企業などが所有して運用するルーター用のソフトウェア、そして一般家庭などで利用する無線LANルーターやスマートフォンなどに導入するソフトウェアなどを用意する(図1)。
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通信事業者用のソフトウェアは、2012年12月に買収が完了した旧ベリビューが持っていた通信事業者向けCDN用ソフトがベースになる。すでに米AT&Tや仏Orange、スペインのTelefonicaなどが導入している。
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