ビジネスを取り巻く環境変化の激しい昨今、グローバル展開や新規事業の創出といった「攻めのIT投資」と、情報セキュリティやコンプライアンスの強化などの「守りのIT投資」をバランス良く展開する――そのための文字どおりの基盤として、企業におけるITインフラの重要性が数年前とは比較にならないほど高まっている。とりわけ、IT活用の生命線とも言えるクラウド/インターネットアクセス環境のパフォーマンスや信頼性については、ビジネスの成否に直結するほどのクリティカルな要素となってきている。今回、「信頼に足るクラウド/インターネット環境」を実現する新世代のITインフラの要件について、アカマイ・テクノロジーズ日本法人職務執行者社長の徳永信二氏に語ってもらった。
「クラウドを“使わない理由”はもはや存在しない」
CDN(コンテンツデリバリネットワーク)を世界900都市に展開するアカマイ・テクノロジーズ。CDNとは、言うなれば、高速・安全なネットワークを提供するためのインテリジェントプラットフォームだ。その特徴についてわかりやすい例を挙げると、通常のインターネット網を一般道とするならば、CDNは高速道路のイメージだ。企業の間でクラウドやインターネット経由でのアプリケーション利用が急速に拡大するなか、安定性、安全性、そして高速性という視点からインターネットを“ビジネスクラス”へと変革することが、この分野をリードするアカマイのミッションということになる。
では、日本企業は、ビジネスにインターネットをグローバルから見てどのレベルまで活用できているのだろうか。アカマイ日本法人社長の徳永信二氏によると、インターネットやクラウドコンピューティングを自社の競争優位獲得に欠かせないITインフラとして積極的に投資を行う企業と、そうした投資に二の足を踏む企業との間で、昨今はかなり差が開いていると指摘する。
「EC企業やネットサービス企業のように、インターネットをベースにした事業を展開している業種の場合は、もはや完全にネット上に事業基盤が確立していると言ってよいでしょう。セキュリティ向上のための取り組みなども進んでいますし、まさに他の業界の一歩先を歩んでいます。ただ、ここにきて、これら以外の産業分野でも、ビジネスを遂行するためのインフラとしてイノベーティブにインターネットを活用するところが急速に増えてきてもいます」(徳永氏)
なかでも攻めの姿勢が目立つのが、“グローバルネイティブ”で世界各国の市場への展開に注力する企業だ。徳永氏によれば、新しい取り組みに慎重と言われる日本の金融業にしても、グローバルなビジョンを持っているところは動きがすばやく非常にアグレッシブだという。同氏はこう続ける。「グローバルにM&Aを展開している当社のお客様の中には、当社への最初のお問い合わせからごく短期間で、クラウド基盤を活用した業務システムを構築されました。金融でこのようなケースは、2年ぐらい前にはまったく見られなかったのですが、最近では珍しくなくなってきています」
その企業のコアコンピタンスを支えるようなミッション・クリティカル性の高いシステムの場合、セキュリティ面などの課題から、これまで多くの企業がクラウドへの移行を見送っていた。しかしながら徳永氏は、「ITリソースのオフプレミス化といった使い方も含めて、もはや企業がクラウドを“使えない”とする理由はどこにもありません」と断言する。潮流の変化を同氏は次のように説明する。
「技術の進展によりセキュアかつハイパフォーマンスな環境が整ったことで、従来のクラウドに対する懸念事項の多くは過去のものとなっています。これまでプライベートクラウド指向が強かった企業も、今後は次々とパブリッククラウドの活用へと歩を進めつつあります。こうしたことから、より開かれたクラウドへの移行が加速するのは間違いないと見ています。今、金融業界は、2020年の東京オリンピックに向けて“キャッシュレスワールド”を創ることを提唱していますし、従来では考えられないようなサービスもこれからクラウド上で提供されるようになっていくことでしょう」