企業がモバイルデバイスを導入するにあたっては、あまたある端末モデルや管理ツールの中から、最終的にどれを選ぶのが最適かを悩み続けるということが往々にしてある。しかし、技術革新が激しい分野だけに、状況は頻繁に変わりゆく。今回は「最適意思決定依存症」を脱するための指針を考えてみたい。
モバイル・ファーストに踏み出すには、当然ながらモバイルデバイスが必要となる。そして、モバイルで利用する以上は、主として社内で利用する既存の業務PCとは異なるモバイル向けの情報漏えい対策が必須となる。結果として、モバイルを検討する際に最初のハードルとなるのが、端末モデル選定とMDM製品選定だ。筆者らの経験では、このハードルを前にして、多くの企業で「最適意思決定依存症」と言える残念な症例に陥り、第一歩から踏みとどまってしまう場合がある。
ある事例では、自社に最適な製品を選ぶために、7種類の端末を購入し、10を超えるMDM製品の資料を取り寄せ、セールスエンジニアから説明を受け、細かく比較分析を行っていた。検討期間は6カ月以上に及び、何とか結論を出せる間際まで進んだが、その頃には新しい端末が発表され、またMDM製品もバージョンアップされたため、比較分析自体がやり直しとなってしまった。最終的に端末モデルとMDMを選定するまでには1年以上を費やした。つまり、肝心なモバイル・シフト自体が1年間以上も遅れてしまったことになる。慎重な検討を否定する気はないが、モバイルのような技術革新の最中にある領域では、「最適意思決定依存症」は致命的な遅れを引き起こす。このような状況が国内のあちこちで起きているとしたら、日本企業はさらに周回遅れを重ねることとなる。
解決の一助として、今回は、端末モデルとMDM製品の選定に関わる処方箋について解説する。
詳細な比較分析に利はなし
筆者らのコンサルティング経験においても、「比較表」のリクエストを受けることは非常に多い。候補となる製品のスペックや機能を一覧化して、比較する作業だ。常にアップデートが必要となるため、作成やメンテナンスは骨が折れるものであるが、それ以上に、比較結果を有効活用することは難しいものとなる。その理由を以下に挙げよう。
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