IT市場調査会社のノークリサーチは2015年5月14日、国内の中堅・中小企業を対象に行ったIT投資動向調査のうち、情報系・顧客管理系システムの市場規模・投資動向の概要を発表した。元来パッケージ製品が多く選ばれていたところに、近年はクラウドサービスも選択肢に加わり、システム構築型を上回る成長率を示している。
ノークリサーチが今回発表したのは、同社が発行した「2015年版中堅・中小企業におけるIT投資の実態と展望レポート」から、情報系・顧客管理系システムの章をピックアップしたものだ。調査期間は2015年1月~4月で、対象の規模は年商5億~500億円の国内企業に属する、経営もしくはITの導入・選定・運用に関わる責任者/担当者。771社の有効回答を得ている。
ここで言う情報系システムとは、メール、グループウェア、社内SNS、ボイスメールといった社内外でのコミュニケーションや情報共有を担うシステムを指す。一方、顧客管理系システムとは、SFA(営業支援)、CRM(顧客関係管理)、コンタクトセンターといった案件管理や顧客との関係性の維持・改善を図るシステムを指す。ノークリサーチの調査レポートでは、両者を情報系・顧客管理系システムとして1つの分野にまとめ、投資規模を算出している。
図1は、中堅・中小企業における情報系/顧客管理系システムへの投資調査の結果から、「パッケージ」と「システム構築」のデータをプロットしたグラフだ。2014年~2019年の平均成長率を比較すると、システム構築が1.36%であるのに対し、パッケージは2.18%となっている。
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この結果に関して、ノークリサーチは、グループウェアのように情報系/顧客管理系の中でも歴史の古い分野ではシェア上位のパッケージが全体に占める割合が高く、ユーザー企業側の現状維持志向も強いと分析。一方で、CRMのように比較的新しい分野においては、数多くのパッケージがシェアを少しずつ分け合い、シェア値にも常に変動が見られるとした。
同調査の設計・分析を担当したノークリサーチ シニアアナリストの岩上由高氏は、分野によって多少の違いはあるものの、年平均成長率が示すように、情報系/顧客管理系システム全体では今後もパッケージ活用が継続していくと予測する。同氏によれば、クラウドを含めたサービス利用についても類似の傾向を示しており、個別に作る形から利用する形への遷移がさらに進んでいくという。
図2は、情報系・顧客管理系システムに対する今後の投資方針を企業の所在地別に集計した結果から、「首都圏」「東海」「近畿」に関する結果の一部をプロットしたものだ。
ノークリサーチが回答の選択肢として挙げた投資方針は、「安価で高機能なパッケージがあれば積極的に変更する」「社内にサーバーを持ち、旧来からのサーバー環境を維持する」「社内にサーバーを持たず、拡張性の高いIaaSへと移行する」「社内にサーバーを持たず、安価なホスティング/SaaSへと移行する」「蓄積されたデータの集計/分析を行う仕組みを導入する」「スマートフォンやタブレットからも利用できるようにする」「ExcelやWordといったオフィス文書と親和性の高いシステムを選ぶ」の7つである。
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ノークリサーチは、調査・分析の結果から読み取れる地域別の投資の傾向を次のようにまとめている。
- 首都圏と近畿では、IaaS活用の意向が東海に比べて高い。また、首都圏では、IaaSの活用意向が社内設置の意向を上回っている
- 東海では、スマートデバイス活用の意向が他の2地域と比べて低い。また、IaaSやホスティング/IaaSと比べて社内設置意向が高い
- 近畿では、高機能なパッケージの導入意向が3地域の中で最も高い。また、オフィス文書との親和性を他の2地域と比べて重視している