香港での案件のため出張した日本ITCソリューション課長の佐々木は、今回の案件のための戦略を練るために、香港支社を訪問した。副支社長の森山とは昔、酒を共にし、アジアの消費市場が巨大化する中で、日本が置かれている窮状について論した仲だ。その後、香港に駐在するようになった森山が、今回の案件に臨むプロジェクトメンバーを収集し、案件の概要を説明し始めた。
「みなさん。今日は朝早くからご苦労様です。東京本社からも佐々木課長に来ていただきました。香港鉄路有限公司のシステム構築への入札の件が目的です。
ご存じのように香港は、『オクトパスカード』と呼ばれる交通プリペイドカードを1997年に導入しています。これは、公共交通機関としては世界の先頭を切って、ソニーが開発した非接触型ICカードの規格であるFeliCaを採用したものです。
オクトパスカードは今では、香港域内の地下鉄から鉄道、バス、香港トラム、LRT、フェリー、ケーブルカーまで、タクシーを除くほとんどの公共交通機関で使えるだけでなく、市中のコンビニエンスストアや、コーヒーショップ、レストラン、自動販売機など様々な加盟店や端末で、電子マネーとして決済ができることは、みなさん知っての通りです。
ただ、オクトパスシステムも導入からすでに20年近くが経っています。地下鉄の路線が拡大されることもあり、今回システムも全面的に改定することになったのです。
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