NECがIoT(Internet of Things:モノのインターネット)事業の強化に向け、独自のシステム構成モデルを提唱している。クラウドコンピューティングの構成を発展させた「5層モデル」である。今後は5層モデルをベースに業種・業態別のIoTソリューションを開発していく。まずは、物流業、新電力、小売り・サービス業、官公庁・自治体、水道事業者向けを順次、投入する。
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)関連システムにおける一般的な流れは、デバイスやセンサーなどで収集したデータをクラウドに送り、そこでデータを分析することで新たなサービスを生み出し利用者や社会に還元することである。一般的なIoTの概念図では、デバイス/センサーとクラウドをネットワークがつなぐ3層モデルになっている。
これに対しNECが提唱するのが「5層モデル」。デバイス/センサーとクラウドの間に「エッジコンピューティング」を加え、デバイス/センサーとエッジを近距離ネットワークで、エッジとクラウドを広域ネットワークでそれぞれ接続する。つまり、デバイス、近距離ネット、エッジ、広域ネット、そしてクラウドの5層構造である(写真1)。
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5層モデルでは、センサーやデバイスが集めたデータは、デバイスの近くに複数台設置されたエッジサーバーがいったん受け取る。エッジサーバーからみれば、それぞれが担当する範囲のデバイス/センサーのデータのみを近距離ネットワークを介して収集する。エッジサーバーは基本ソフト(OS)や分析エンジンを搭載し、収集したデータを振り分け、エッジサーバーで処理した結果を直ぐにデバイスなどに返したり、クラウド側に送る必要があるデータだけを広域ネットワーク経由で送出したりする。
3層モデルでは、デバイス/センサーのデータは、インターネトを介して直接クラウドに送られる。クラウドは、デバイスから次々と送られてくる大量データを処理するために作業負担が大きくなる。デバイスとクラウドの距離が離れていれば通信遅延は避けられない。これを5層モデルにすることで、クラウドの負担軽減と通信の高速化を図る。
同様のモデルは、米シスコシステムズが「フォグコンピューティング」として提唱している。クラウドとデバイスの間に「フォグ(霧)」と呼ぶ分散処理環境を置く。そこでは明示されていないデバイス・センサーとフォグ、フォグとクラウドを結ぶネットワークを加えれば、こららも同じ5層構造になる。
NECとしては、この5層モデルの中で、同社が得意分野に挙げるSDN(Software Defined Network)やビッグデータ分析、セキュリティなどの技術を組み合わせ、差異化を図りたい考えだ。例えば、SDNを実現する技術である「OpenFlow」をベースにした製品の開発力や、ビッグデータの高速処理技術、未知の攻撃を検知するセキュリティ技術などである。