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[真のグローバルリーダーになるために]

【第24回】日本人の“真面目さ”を逆手に相手の虚を衝く

2015年12月18日(金)海野 惠一(スウィングバイ 代表取締役社長)

香港での大型案件の競合相手、北京鳳凰のトップに会うために北京に飛んだ、日本ITCソリューション課長の佐々木と香港支社副社長の森山、そして協業する三井商事の筒井。北京で待っていた筒井の部下、三井商事北京支社の大神が仕入れた情報は、筒井の予想通り、安値攻勢の裏にもう1つ別の案件があった。そんな北京鳳凰に対する攻め処はどこか。ロビーに集合した4人は、夕食を採りにホテルを出た。

 5月の北京は、かつては爽やかだった。それも最近は、大気中に浮遊する微粒子PM2.5のおかげで空がどんよりしている。ただ、思っているほどは大気が汚れているという感じはしない。10分ほど歩いて店に着いた。この四川料理の店『紅京魚』には円卓とボックス席があるが、今回は4人だったのでボックス席に案内された。

 「ここの四川料理は特に辛いので有名です」。大神はメニューを見ながら説明を始めた。

 「名物は、ナマズの一種の江団魚のラー油煮込みと蟹の唐辛子炒めで、・・・」と、料理をみんなに説明しながら、メニューから選び注文した。この店には、草魚とかナマズ、カエル、田うなぎ、ライギョなどの変わった料理がある。そのいくつかを大神は注文した。佐々木は、そのどれも食べたことはなかったので興味津々だった。

 料理は結構辛かったが、珍しい魚ばかりだったので話が弾んだ。北京は空気が悪いのと物価が高くなってきたので、日本円で給与が支給されている大神は「生活が大変だ」とこぼしていた。習近平の腐敗撲滅運動のせいで、北京では高価なレストランは軒並み経営不振に陥っている。一方で、経済成長が停滞しているとは言っても、まだまだ不動産バブルの余波があり、街は活況を呈しているといった話に花が咲いた(図1)。

図1:中国のGDP成長率(実質GDP前年度比増減率)の推移図1:中国のGDP成長率(実質GDP前年度比増減率)の推移
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 なんと言っても、ここ中国は日本と違い、1人当たりGDPが1万ドル以上の都市に住む人口が2010年の1億人から2015年には4億人近くにも増えている。そう考えれば、インフレ率が2%以下という中国政府の公式な発表とは裏腹に、わずか3年で物価が2倍近くも跳ね上がっているのが現状だ(図2)。

図2:中国の消費者物価指数の推移(前年同月を100とした比較)図2:中国の消費者物価指数の推移(前年同月を100とした比較)
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 料理も終わり近くになったところで、森山が話題を変えて、こう切り出した。

 「先ほど、大神さんの説明がありましたが、その件で皆さんのご意見をお聞きしたいのですが。大神さんの話では、もう1件、別の入札を彼らが期待しているそうですが、蘇総経理には明日どう話を切り出しましょうか?」

 「まずは相手の出方を見ないとなんとも言えませんが、いくつかの対応策は考えておいたほうがいいですね」と筒井が答えた。そこで森山は、佐々木が昨日提案した「相手に対しての信頼をどう取り付けるか」について説明した。

 「それでは、彼はアメリカでの生活が長いので、アメリカの話題から入りましょう。それで本題は、どう切り出しますか?」と筒井が言った。

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