香港での大型案件での競合相手、北京鳳凰を訪問した日本ITCソリューションの佐々木たちだったが、色よい結果は持ち帰れなかった。だが、北京鳳凰が開発プロジェクトでトラブっていることを知った佐々木は、日本企業が持つプロジェクトマネジメントのノウハウを提供しようと、北京鳳凰の蘇総経理に持ちかけ、再訪の機会をなんとか作り上げた。
草を打って蛇を驚かす−−。三十六計の第十三計に沿って日本ITCソリューション課長の佐々木が、北京鳳凰がプロジェクト管理に悩んでいるのではないかと探りを入れたところ、蘇総経理は「是非、教えてほしい」と反応してきた。蘇総経理はアメリカ出張を控えていたため、帰国後の6月4日に再訪することになった。
佐々木はその間、5月26日に開かれた第1回検討資料報告会に出席し、開発費の見積もりなどをプロジェクトの準備メンバーに指示した。その中で佐々木は、システム開発の詳細設計について、懸案している内容の検討状況を解説した。東京での仕事も忙しく、時間はあっという間に過ぎていき、6月がすぐに来てしまった。
「三森事業部長、今日はもう2日です。明日の飛行機で出発しないと4日の蘇さんとの面談には間に合いませんが、どうされますか?」
「そうでしたね。予定に入れてあるので、ちょっと待ってください。蘇さんとのアポは4日の何時ですか」
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