[調査・レポート]

本当は実店舗で買い物を楽しみたい?! マンハッタン・アソシエイツの調査から

2016年4月22日(金)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

インターネットの浸透に伴い小売業におけるオンラインショップやスマートフォン用アプリケーションの強化が続いている。しかし、若年層を含めた消費者は実際には「実店舗で店員との会話を通した買い物を楽しみたい」と考えているとの調査結果が出た。倉庫/在庫管理やオムニチャネル用ソフトウェアなどを開発する英米マンハッタン・アソシエイツの日本法人が実施したものである。オムニチャネル戦略を考える際の参考になりそうだ。

 マンハッタン・アソシエイツが実施したのは、国内の18歳以上の男女2066人を対象にしたオンライン調査。期間は2016年3月24日と25日の2日間である。

 実店舗とオンラインショップとでは、どちらでの買い物が好きかとの問に対し、最も多かったのは「購入する商品による」だったが、それに続いたのは「実店舗」で「オンラインショップ」を倍に届こうとするほど上回った(図1)。実店舗と御ライショップを使い分けているものの、「買い物」という行為としては実店舗を好むというわけだ。

図1:「買い物」という行為を楽しむのは実店舗という声が強い図1:「買い物」という行為を楽しむのは実店舗という声が強い
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 実店舗で買い物をしようと思う理由としては、76%が「商品の購入前に見たり触れたり試したりできるから」としており、これに「すぐに商品が手に入るから」が47.9%で続き、商品がリアルに存在することを評価する声が上位を占める。ただ「店員と話したりすることで自分にあった対応をしてもらえるから」や「色々な体験や新しい発見ができるから」など、購買体験を挙げる声もある。

 店員へ期待する声は強い。満足できる買い物のために店員の存在はどの程度重要かという問に対し、半数を超える56%が「非常に重要」または「やや重要」と答えている(図2)。

図2:店員への期待は高いが知識面では消費者が上回っているようだ図2:店員への期待は高いが知識面では消費者が上回っているようだ
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 ただし、その店員に対しては買い物時に「店員より自分のほうが知識がある」と感じるとする声が、やはり半数を超える56%に上っている。ネットの普及で消費者のほうが競合情報を含め、より多くの情報を得られるようになってきていることが、こうした店員に対する期待と現実のギャップを生んでいるのだろう。

 そうしたギャップが解消されれば、消費者は実店舗にもっと足を運びそうだ。回答者の70%が「自分の好みにあった商品提案をしてもらえるなら、もっと店員との会話を増やしたい」という(図3)。その際、店員が提供すべきサービス(情報)としては「商品に関するアドバイス」が45%で最も多く、それに「商品のお得な情報」が22%で続いている。

図3:消費者は店員と自分の好みに合った会話を望んでいる図3:消費者は店員と自分の好みに合った会話を望んでいる
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 情報提供や商品の提案など店舗における店員との対話を重要視する傾向は、55歳以上のグループで強かった(76%)。だが、「自分の好みにあった商品提案をしてもらえるなら、もっと店員との会話を増やしたい」という考え方は、55歳以上の73%には及ばないものの、1900年代後半に生まれた“デジタルネイティブ”とされる18〜24歳のグループでも62%と高かった。

 今回の調査では、実店舗/店員への期待とは別に、どんなサービスがあれば個人情報を提供しても良いかも問うている。最も多かったのは「値引きが受けられる」の41%だが、「特にない/選択肢にない」とする声も30.1%あった。ただ、ここでも「自分にぴったりの商品を見つけられる」「商品やサービスに関する情報がより詳しく得られる」「好みに合わせて接客してくれる」など“買い物体験”に期待する声も少なくない(図4)。

図4:値引きがあれば個人情報を提供しても良いとする声が最も強い図4:値引きがあれば個人情報を提供しても良いとする声が最も強い
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 マンハッタン・アソシエイツでは、ほぼ同様の質問項目による調査を英国でも先行して実施している。その結果は、今回の日本での調査結果とほぼ同様の傾向を見せている。大きな差が出たのは、店頭で受けたい情報として「在庫の確認」を求めることが強いことと、「返品ができる仕組み」を重要視している点だった。日本には返品の習慣が根付いていなこともあり、それを求める声はいため、20%にとどまった。

 実店舗とオンラインショップを巡る議論では、オムニチャネルの実践やCX(Customer Experience:顧客体験)の充実を図る取り組みが注目されている。ただIT主導のオムにチャネル/CXでは、スマホ用アプリケーションや消費者に対するオンラインでの情報提供などに話題が偏りがちでもある。

 今回の調査結果は、オンラインだけでなく実店舗でのCX向上が必要なことを示していると言える。少子高齢化によりパート/アルバイトによるスタッフ確保も難しくなってきているだけに、実店舗あるいはコールセンターなどで消費者と直接に対話する店員やオペレーターといったスタッフへの情報提供・情報活用のための仕組みとしても、オムニチャネルやCX向上などを考慮する必要がありそうだ。

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