[ザ・プロジェクト]
現場発のIoT/ビッグデータで安全とサービスを作り込む―日本航空
2017年2月14日(火)佃 均(ITジャーナリスト)
「攻めのIT経営銘柄2016」に日本航空(証券番号9201)が選ばれたのは、中期経営計画を実現する重要な手段としてITを位置づけていることにある。具体的な事例として発表資料にあるのは、衛星通信を経由した航空機内でのインターネット接続サービスと、座席予約管理業務のプロセス統合の2点。常務執行役員でIT企画本部長の石関佳志(きよし)氏は「それだけに限定されるものではありません」と言う。
中期計画で3つの差別化ファクター
東京・天王洲の日本航空本社。会議室には白い機体、白い尾翼に鶴丸の旅客機の模型が置かれている。窓の外には東京臨海副都心と東京湾が広がり、首都高速、モノレール、新幹線、そして羽田を離着陸する航空機が見える。そんな景色が見えるのはここだけだが、残念ながら仕事が待っている。
「今日はどちらの話をしましょうか」――席に着くなり、石関佳志氏(写真1)はこう切り出した。
「座席予約管理システムの統合は今年の11月ですから。そのとき改めて、ということにしますか」
どことなくセピア色が漂うメインフレーム+スクラッチ+オンプレミス型のオンライン座席予約管理システム「JALCOM」を取材したことがある筆者としては、 国内線と国際線のシステムプラットフォームを統合して、アマデウスの「Altea」にアウトソースするというのには、一種の感慨がある。しかし時代のトレンドはIoT、ビッグデータ、AIの第4次産業革命にある。
「では、デジタルのほうにしますか」
ということで、インタビューは始まった。
同社が中期経営計画「2012~2016年度 JALグループ中期経営計画」で掲げたのは「輸送分野における安全のリーディングカンパニー」「顧客満足No.1」「5年連続営業利益率10%以上、2016年度末自己資本比率50%以上」。それを競合他社との差別化の視点に置き換えると、「JALブランドの追求」「路線ネットワーク・商品サービス」「コスト競争力」 となる。「2016年度は2017年度以後への準備という位置づけ」の中で、攻めのIT経営銘柄に選ばれたことは大きな弾みになるに違いない。
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