データに基づき意思決定を下したり新しいサービスを創出したりする−−。こうした経営に舵を切りたい一方で、データサイエンティストやデータアナリストといった人材の獲得が課題になっている。その課題に対し「必要な人材は自社で育成・採用する」ことを基本に、より能動的な施策に打って出たのがSOMPOホールディングスグループだ。同社のチーフ・データサイエンティストである中林紀彦氏が「データマネジメント2017」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム=JDMC)に登壇し、実践的なデータサイエンティスト組織の作り方や人材育成についての考え方を解説した。
特別養成コースでは、約3カ月間にわたり、ディープラーニングなどAIに必須のコンテンツを準備(図4)。そのうえで「SOMPOホールディングスが実際に保有する自動車の走行データや健康関連データなどを使い、一流メンターの助言のもとで実践的なデータ分析からデータ活用ビジネスの企画・提案までを実習する」(中林氏)。今後も「春と秋に年2回のペースで実施していく」(同)計画だ。

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ちなみにメンターを務めているのは、デジタルハリウッド大学教授の橋本 大也 氏、グラフ代表取締役の原田 博植 氏(日本経済新聞社のデータサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー受賞)、健康関連データビジネスを手がけるジーンクエスト代表取締役の高橋 祥子 氏、ライフログアプリ「SilentLog」の企画・開発を主導したレイ・フロンティア取締役COOの澤田 典宏 氏、産業技術研究所 研究グループ長の蔵田 武志 氏などである。
さらに、グループ内外の人材育成・交流の場として「Data Institute」も設立した。社会人経験者を対象にするData Science BOOTCAMPのほかに、グループ社員向けの「WORKSHOP」、学生が対象の「INTERNSHIP」、大学や研究機関との共同研究による人材育成を目的にする「RESEARCH」などのプログラムを提供していく計画だ。中林氏は「データサイエンティストをはじめ、SOMPOホールディングスグループのデータ活用に関わる人材を総合的に養成する機関を目指す」と話す。なおWORKSHOPを除くいずれのプログラム受講者にも、SOMPOホールディングスグループへの就職を義務付けてはいない。
日本企業のための“実験場”になり成功パターンを広めていく
「AIやIoT、ビッグデータといったテクノロジーはあくまでも素材や道具にすぎない。事業戦略に基づいた人材育成こそが大切だ。SOMPOホールディングスグループの取り組みは、同じ課題にチャレンジする日本企業の実験場でもある。ここで得られた成功パターンをフレームワークにし広めていく役割をも担いたい」と中林氏は総括する(図5)。データサイエンスをはじめとするビッグデータやAIを活用できる人材育成の先駆者となり、日本企業の競争力強化に貢献していく考えである。

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