デジタルビジネスの波は、テクノロジーが進化すれば増幅されていくから止まることはない。この流れの中でCIOやシステム部門の職務はどうなっていくのか? どうすべきなのか? 明らかなのは、「守り」だけの役割は終わったということだ。
「デジタル」という言葉を耳にする機会が増えた。デジタルとアナログのような概念の違いで使われるデジタルとはニュアンスが異なる。数値やテキストの処理の仕方からコンピュータを意味していることも多いが、それとも少し違う。コンピュータやネットワークがベースであることを前提にした全体的な仕組みのことを指しているようだ。デジタルライフ、デジタルソサエティー、デジタルビジネス、デジタルイノベーションなどと多様に使われるようになった。
中でも特にデジタルビジネスが取り上げられることが多い。従来のビジネスの情報化やシステム化とは一線を画している。企業がよりアグレッシブに、よりドラスティックに、よりスピーディにデジタル技術を活用し、経営革新やビジネスモデルの変革を推進することを意味する。経済産業省も数年前から企業における戦略的なIT投資を促すために「守りのIT」から「攻めのIT」への転換を打ち出している。
IT業界もバイモーダルIT(二つの異なる流儀のIT)という概念を提示する。業務の効率化を目的とし、経営や事業のインフラである情報システムを指すSystems of Record(SoR)に加えて、モバイルやクラウド、AI、IoTといったデジタル技術を生かしてビジネスを仕掛けていくSystems of Engagement(SoE)を構築し、その両輪による経営スタイルを推奨している。デジタルビジネスの波は、テクノロジーが進化すれば増幅されていくから止まることはない。求められるのは波を乗り越えていく知恵と行動だ。
このままでは危ういCIOとシステム部門の職務
誰がその任を担うのか? 米国ではCIOに対するITサービス企業の関心が薄らいでいると聞く。CIOは特にSoEに関してプライオリティの高い商談相手=投資ターゲットではないということだ。テクノロジーやサービスの変化に伴って、CIOやシステム部門は常に波に揉まれる。TwitterやFacebookなどソーシャル・ネットワークが定着し、デジタルマーケティングが喧伝された4、5年前、IT投資の権限はCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に移っていくと言われた。
同様にクラウドがバズワードから脱して事業部門でも使える実用レベルになると、投資ターゲットが事業部門へシフトすると言われた。今はさらにターゲットがCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)に移りつつある。CDOは2015年くらいから欧米で注目されだした役職である。
会員登録(無料)が必要です
- 尖った才能を生かせない日本に将来はあるか?(2022/08/02)
- 損切りできない日本の習性を断ち切れ!(2022/06/28)
- フィリピンと日本、どちらが先進国か─入出国システムが顕わにしたこの国の劣化ぶり(2022/05/30)
- 進化し続けるメタバース、人間社会はどう変わるのか?(2022/04/21)
- DXに取り組む前に、基本の「標準化」からやり直せ!(2022/03/29)