システム開発における人月ベースの見積もりが適性に行えない。この問題は、IT業界の“永遠の課題”であり続けるのだろうか。対案は何年も前から出てきているが周知されていない。この問題を適正な見積もりを阻害する本当の理由と併せて考察してみたい。
諸要因の変動による費用増を織り込んだCoBRA法
企業情報システムの開発、特にゼロからの手組み開発(スクラッチ開発)を請け負う企業の見積もり問題は、今も延々と続いている。「何人の技術者で何カ月かかる」といった人月による概算の見積もりが横行し、客観性や納得感のある見積もりができないという問題だ。
入出力などの機能数から工数規模を定量的に勘定するファンクションポイント(FP)法というアプローチが以前から提案されているが、ばらつきが大きくて定着していない。システム設計やアーキテクチャなど、バラつきを生じさせる変動要素を分析してパターン化すれば精度は上がるはずだし、今なら機械学習による分析もできそうな気もする。だが、そのような試みは一向に見られない。
似た手法にCoBRA法というドイツで開発された見積もりのモデルがある。Cost estimation, Benchmarking and Risk Assessmentの頭文字を取ったもので、以下のような数式で表される。
E = a×Size ×(1+ΣCOi)
E : 見積もり工数(費用)
a : 変動要因がない場合の生産性
Size : 開発の規模
CO : 工数増加要因ごとの増加率
CoBRA法では、さまざまな要因による変動で費用が増えることを前提とし、その要因や標準生産性を過去の実施プロジェクトを元に計算。変動要因による増加率を見込んで見積もり工数を算出する。COの決め方が経験則に基づく技術者のブレーンストーミングに依るなど恣意性もあるが、情報処理推進機構(IPA)ではCoBRA法による見積もり支援ツールを提供している(図1)。
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