[経営者をその気にさせる―デジタル時代の基幹システム活用戦略]

研究・開発とマーケティングのシステム連携【第10回】

2018年8月9日(木)青柳 行浩(NTTデータ グローバルソリューションズ ビジネスイノベーション推進部 ビジネストランスフォーメーション室 室長)

今回はECM/SDM及びDCMの連携について考えてみる。ECM(Engineering Chain Management)/SDM(Service Design Management)とDCM(Demand Chain Management)は、製品やサービスに関連するデータの発生源となるプロセスであり、製品やサービスを直接提供するSCMと異なり、連携する情報の内容が重要になってくる。

研究・開発領域でもっとも重視されている課題

 日本能率協会が年次で実施している「2017年度 当面する企業の経営課題に関する調査」では、「研究・開発領域で重視する課題」として研究・開発とマーケティングの連携が4番目に挙げられている。大手・中堅企業では3番目に挙げられている「研究・開発成果の製品化・事業化率の向上」よりも重視している比率は高くなっている。また、1番目には「経営・事業戦略と一貫性する研究・開発テーマの設定」が挙げられているが、経営・事業戦略がマーケティングに基づいて立案されることを考えると、研究・開発とマーケティングの連携は研究・開発領域で最も重視されている課題と言える(図1)。

図1:研究開発領域で重視する課題(出典:日本能率協会「2017年度 当面する企業の経営課題に関する調査」)
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 ECM(Engineering Chain Management)には製品の企画・開発から設計、SDM(Service Design Management)にはサービスの企画・開発から設計プロセス、DCM(Demand Chain Management)にはマーケティングを含む営業活動と保証・保守プロセスが含まれる。

 新製品・新サービスの企画は新技術や新素材などのシーズによるものが多く、顧客からの情報(VOC、例えば揮発性有機化合物やクレームなどの品質情報)に埋もれている、どうすればもっとよい製品になるか、どんな機能やサービスがほしいかというニーズが、製品・サービス企画・開発部門にとっての、数少ない顧客とのダイレクトな接点になる。

 ビッグデータ(SNSやWebサイトにおけるデータ、あるいはICカードなどのセンサーデータ、会員カードなどの顧客データやPOSなどのオペレーションデータなどの情報の集約)を新商品の開発につなげていくというアプローチも今後は考えられる。だが、現時点ではビッグデータを新商品開発に利用しているケースはほとんど見られない。AIに関しては製薬業界でのAI創薬のように活用が広がりつつあるが、ニーズを発見するというのではなく、新薬研究開発の生産性の向上策であり、シーズからの新商品開発をアクセラレートするための手法と言えるだろう。

 一方、ECM/SDMからDCMの間の製品・サービス情報の連携は整備されているとは言い難い。大手企業においても、製品・サービス情報がExcelなどの手許データで管理され、営業/マーケティング部門では最終的な製品・サービスに関する最新の情報が適切に連携されていない場合も多い。営業/マーケティング部門として製品情報をWebサイトに提示しようとしたら、掲載する製品・サービス情報に関する最新で正確な情報を持っていないことに気がつき、あわてて、その情報を集めて、整理しなければならなかったりする。しかし、この整理の仕方にも問題がある。

 営業部門が顧客の視点で製品体系を考えるのに対して、設計・開発部門は技術の視点で製品体系を考えるために、設計・開発部門が発番する製品コードが技術視点で採番されていることが多く、営業部門の製品体系に合わせて変換するのに手数がかかったり、漏れが発生したりしてしまう。

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