ドイツテレコム(Deutsche Telekom)と言えば、日本のNTTに相当するドイツ最大の通信事業会社。現在、同社の技術・イノベーション部門のトップはクラウディア・ネマート(Claudia Nemat)氏という女性だ。ドイツ通信業界の中枢会社で技術・イノベーション部門を担うネマート氏は、現在、そして今後のITやインターネットにどんな展望を持っているのか。デジタル動向を扱う現地メディア「t3n」に掲載されたインタビュー(https://t3n.de/magazin/telekom-claudia-nemat-amazon-244460/)から要旨をお伝えする。
ドイツテレコムの技術・イノベーション(Technology and Innovation)部門を統括するクラウディア・ネマート氏(写真1)。同氏は今年(2019年)で51歳。物理学者の父親の影響を受け、子供の頃から物理が得意で、素粒子論の学者を志してケルン大学に入学。しかし、卒業後は実業界への道を進むことになる。

同氏はコンサルティング会社の米マッキンゼー(McKinsey & Company)に入社し、種々の要職に就くが、軸足は技術部門、とりわけITと通信にあったという。2011年にドイツテレコムに移籍してヨーロッパ事業を統括。 2017年からは技術/イノベーション部門のトップに就任。2016年からは仏エアバス(Airbus)の社外取締役も兼務する。
このような、輝かしいキャリアのネマート氏がt3nのインタビューに応じた。特に、IT、5G、インターネットなどの将来について熱く語っており、ポイントになるところをいくつか紹介しよう。
5GのキラーアプリはゲームとAR
ネマート氏は、今後のITでは通信と音声認識の融合が特に重要だと考えている。通信業者としてのドイツテレコムが一般のIT業者と比較した場合の優位性がそこにあるからだという。同時に、データは今後ますますクラウド上に蓄積されることになる中で、そのセキュリティは、単に格納されたデータに対してだけでなく、ネットワーク経路全体での高いセキュリティが求められる。この点で、通信網を持つ通信業者が優位になると指摘している。
今注目の5G(第5世代移動通信システム)の応用用途に、自動車、航空機、トラクター、ロボットなどの自動運転などがよく挙がる。ネマート氏は、最終的な5Gのキラーアプリケーションとして、コンピュータゲーム、およびその発展形としてのAR(拡張現実)だと予測する。
これらの普及には、多人数が同時にアクセスした状態で、遅延時間が短いことが要求される。現在のARはサーバー側での情報管理がなされており、それでは負荷が集中したときにレスポンスが遅れることになる。それを解決するのがエッジコンピューティングとクラウドを統合したものだという。
●Next:スマホの将来/インターネットのあり方への懸念
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