コネクテッドカーに自動運転、カーシェアリング、電気自動車など、自動車業界に100年に一度の大変革期──「CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)革命──が訪れている。2020年1月のCESでは「コネクティッドシティ」と壮大な構想を発表したトヨタ自動車は、その大変革期の真っただ中で、コネクテッドカーやMaaSへの取り組みを進めている。2020年1月に都内で開催されたNTTデータの年次イベント「NTT DATA Innovation Conference 2020」で、トヨタ自動車 コネクティッドカンパニー e-TOYOTA部 スマートセンター開発室長の堂原淳也氏が、取り組みの詳細を説明した。
インターネットとつながり、外部からの新しいサービスを利用者に提供する「コネクテッドカー」は広く知られるようになった。例として、自動車事故発生時に自動で警察や消防などの緊急対応機関に緊急通報を行う「緊急通報システム」や運転中の振る舞いや走行距離によって保険料を算出する「テレマティクス保険」、車両の盗難が判明した場合に車両の位置を追跡することができる「盗難車両追跡システム」などが挙げられる。
トヨタのコネクティッド戦略は3本の矢で推進
トヨタ自動車の堂原淳也氏(写真1)が所属するコネクティッドカンパニー e-TOYOTA部 スマートセンター開発室は、トヨタが手掛けているコネクテッドカーの、車以外のプラットフォーム、アプリケーション開発を担当するIT部門。いうなればデジタルトランスフォーメーション(DX)の開発部隊だ。そのリーダーである堂原氏は、コネクティッド戦略が発表される以前から、トヨタのデジタル化を推進してきた人物だ。
先に、トヨタのコネクティッド戦略について説明しておく。堂原氏によると2016年に発表されたコネクティッド戦略は3本の矢で構成されている。1本目の矢が「すべてのクルマをコネクティッド化し、『モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)』を構築」。2本目の矢が「ビッグデータの活用を推進し、お客様や社会に貢献すると同時に、トヨタ自身のビジネス変革を推進」。3本目の矢が「さまざまな企業と連携し、新たなモビリティサービスを創出」である。
堂原氏は、コネクティッド戦略の構成図をスライドに示した(図1)。DMC(専用通信機)を装着したコネクテッドカーからのデータをグローバルの通信プラットフォームを介してトヨタスマートセンター(TSC)に収集する。その上位レイヤーに現在開発中のMSPFがある。これは保険やカーシェア、運行管理などサードパーティと連携して開発するサービスの基盤となるもの。そのサービスプラットフォームから保険やライドシェア、カーシェアなどさまざまなサービスが事業者を通して提供される。
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また、トヨタは2018年頃からモビリティカンパニーを標榜し、MaaS(Mobility as a Service)戦略に取り組んでいる。MaaSはビジネスモデルの変革であり、社業を自動車そのものではなく、自動車が消費者に提供する価値である「移動」をサービスとして提供するというものだ。その際、消費者は自動車の「所有」にはこだわらない。サブスクリプションサービスの「KINTO」やカーシェアサービスの「TOYOTA SHARE」、米ウーバー(Uber)との協業で進めている自動運転によるライドシェアサービスなどが例として挙げられる。
コネクティッド戦略にMaaS戦略を加えたものが、トヨタがモビリティカンパニーに生まれ変わるために進めているデジタルトランスフォーメーションということになる。
堂原氏は、トヨタのデジタル化を2つのタイヤに例えた(図2)。「テクノロジーを駆使すること」「カルチャーを変えること」がデジタル化推進の両輪となるという。この中で、最も重要なテクノロジーとして位置付けられたのが「クラウド」、カルチャーを変える手段として取り入れたのが「アジャイル」だった。トヨタのデジタル化戦略の両輪を担っているのがクラウドとアジャイルということになる。
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●Column●トヨタ、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッドシティ」を描く
トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏は2020年1月、米ラスベガスで開催されたCES 2020で「コネクティッドシティ」プロジェクトを発表した。
2020年末に閉鎖予定であるトヨタの東富士工場(静岡県裾野市)の175エーカー(約70.8万平方m)の跡地に、「Woven City(ウーブンシティ)」と命名したコネクティッドシティを設置する。人々が生活を送るリアルな環境のもと、自動運転、MaaS、パーソナルモビリティといった自動車関連のものだけでなく、ロボット、スマートホーム技術、AI技術など参画企業、研究者の様々なテクノロジーを導入・検証できる実証都市となる予定だ。
これまで、実際の都市を「実証都市」に見立て、既存のインフラを使って実証実験を行うスマートシティの試みは多くの都市・地域で行われてきた。しかし、豊田氏が提唱するコネクティッドシティは、実証実験のためのリアルな「街」をゼロから作り上げるというもの。主な構想は以下のとおり。
●街を通る道を、完全自動運転かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道、歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存する道、歩行者専用の道の3つに分類し、それらの道が網の目のように織り込まれた街を作る。
●建物は温室効果ガスの排出量が少ないカーボンニュートラルな木材で作り、屋根には太陽光発電パネルを設置するなど、環境との調和やサステイナビリティを前提とした街作りを行う。
●街のインフラはすべて地下に設置する。
●住民は、室内用ロボットなどの新技術を検証するほか、センサーデータを活用するAIにより生活の質を向上させることができる。
●大型の近距離輸送用自動運転EVカー「e-Palette」を移動用店舗としても利用する。
●街の中心や各ブロックに公園や広場を作り、住民同士のコミュニティを形成する。
研究者やエンジニア、科学者は、実際に人々が生活するリアルな空間を実証環境として、さまざまなテクノロジーを試すことができる。参画は世界中の企業、研究者から募っており、すでに参画希望者向けのウェブサイトもある。2021年に着工予定となっている。
●Next:トヨタの戦略を具現化するIT、クラウド基盤を2回も作り直した理由は?
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