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[データマネジメント2020]

DX時代のCRMに求められる視点と機能―顧客の育成・活性化に欠かせない3つのポイントとは

2020年4月8日(水)

DXの取り組みではCRMが重要な役割を果たす。「データマネジメント2020」のセッションでは、東急エージェンシー データマネジメント局データアナリティクス部の飯塚久哲氏と、ソリューション開発局第1ソリューション開発部の小柴亮威氏が「CRM進化論! DX時代のCRMに求められる視点と機能」と題して、今後のCRMのあり方を展望した。

2000年代に活発化したABC分析、ただし限界も

 デジタルトランスフォーメーション(DX)における中核的な取り組みの1つに、顧客接点の変革がある。新しいビジネス価値を創出するためには、顧客の行動や嗜好を分析し、顧客エンゲージメントを高めていくことが欠かせない。従来からこうした取り組みを支えてきたのがCRMだ。東急エージェンシー データアナリティクス部の飯塚久哲氏は、CRMの歴史を振り返りながら、従来のCRMのアプローチではDX時代の顧客分析や顧客接点の変革は限界があると指摘した。

株式会社東急エージェンシー データマネジメント局データアナリティクス部 飯塚久哲氏

 「2000年頃から日本でもCRMの取り組みが活発化しました。小売業では、品揃えを強化するためにABC分析で不振な商品を把握し、売上増加が見込めそうな商品にスイッチするというアプローチが採られました。しかし、結果としてカテゴリ全体の売上は増加したものの、中長期的には優良顧客が減少し、売上が低下してしまうということがありました」(飯塚氏)。

 なぜこうした結果になるかというと、売上が少なくとも、同時にロイヤル顧客群が愛用する商品というものがあり、その商品を店頭に並べなくなったことで、そのロイヤル顧客群の来店がなくなってしまったためだという。

 この場合に適したアプローチは、ABC分析で各商品の売上状況を確認してから、外部データの売り筋情報を確認。また、スイッチ対象となる商品の購入者の会員ランクを確認し、スイッチすべき商品を決定することだ。これにより合理的な意思決定が可能になる。

 こうした合理的な意思決定には、ID付きPOSデータも大きな役割を果たした。「誰」が買ったかがわかるようになり、新規と既存、優良と一般などの顧客分類が可能になった。さらにCRMが進化し、顧客の維持をメインにした「守り」の施策から、顧客を活性化させる「攻め」の施策が実施できるようになった。

顧客の育成・活性化に欠かせない3つのポイント

 では、これからのDX時代にどんな「攻め」のCRMが実践できるようになるのか。飯塚氏はまず、攻めのCRMに求められる視点として「育成・活性化」を挙げ、こう述べた。

 「育成・活性化には欠かせないポイントは、定点観測、効果測定、顧客理解の3つです。定点観測では、UU数、利用金額、単価といった売上指標の動きを把握し、変化を察知します。また、効果測定では、実施した施策の効果を評価し、今後の施策に活かします。さらに顧客理解では顧客の売上指標だけでなく、顧客育成の成果を精査しPDCAに活かします」(飯塚氏)。

DX時代のCRMに必要な視点

 ダイエットに例えると、定点観測は「顧客により健康になってもらうために日々の体重チェックや体調変化を把握すること」、効果測定は「どのダイエットメニューが効果的なのかチェックして施策の確度を高めること」、顧客理解は「血液検査や心電図など体重以外の詳細な情報を活用して目的の達成に近づけること」に相当する。定点観測、効果測定、顧客理解という3つの歯車を絶えず回し続けることが重要になる。

 また、近年のDXやデータドリブンマーケティングに対しては大きく2つの期待があると飯塚氏は話す。1つは、コミュニケーションの最適化(パーソナライズ化)、もう1つは顧客理解の深化(見える化)だ。パーソナライズ化によって施策の効果を高め、見える化によって顧客理解を深めることが期待されている。

 「顧客理解ではデータ活用が重要ですが、単に履歴データを分析し既存顧客へのリテンションを高めるだけでなく、サイト閲覧履歴データなどから新規顧客の獲得(アクイジション)にもデータを活用していくことが求められます。その際には、自社データを棚卸しし、サイトやアプリの閲覧履歴を管理するCDPを構築・活用していくことも重要です」(飯塚氏)。

 東急エージェンシーは、2019年にADKマーケティング・ソリューションズ、ジェイアール東日本企画と共同でデータマーケティング領域における新会社Data Chemistry(データケミストリー)を設立し、現在「DC Catalyzer」というパブリックDMPを構築・活用しているという。

定点観測、効果測定、顧客理解をどう行えばよいか

 続いて飯塚氏は、定点観測、効果測定、顧客理解の3つについて、具体的な取り組み事例を紹介していった。

定点観測

 定点観測では、売上、顧客数、顧客単価などの推移を、店舗全体、アプリ会員、アプリ会員比、アプリ利用状況など、売上に影響しそうなさまざまなデータとかけあわせて日々確認することが重要だ。

 「気象情報やチラシなどの施策情報を含めて、さまざまなデータをマージし、売上に影響があるのはどんな要因か、そのなかで自分たちが操作できる要因は何か、操作できない場合はどのような代替策があるかを把握していきます」(飯塚氏)。

効果測定

 効果測定については2つのポイントがある。

  • ファネル的な評価
  • 統計的な評価(因果推論的評価)

 ファネル的な評価では、メールマガジンのプッシュ通知などのアクションを実施した際に、配信数、クリック数、来店者数、購買者数などの歩留まりを把握する。一方、統計的な評価では、適切な比較対象をどう作るかがポイントで、データの乱れを統計的なアプローチで補正していく。「今後はマーケティング分野でもこうした統計的なアプローチが増えていく」と飯塚氏は見ている。

顧客理解

 顧客理解については、RFM(Recency、Frequency、Monetary)、顧客ランク、平均単価、会員化年数、シェアオブウォレット、LTV(Life Time Value)、NPS(Net Promoter Score)などの主要な顧客管理指標を解説した。

 「RFMは、アプローチすべき顧客の優先付けや顧客状態の定点観測に効果を発揮します。ただ、特徴把握の精度や将来的な視点がないという課題もあります。そこで、クランピネス(Clumpiness)やバラエティ(Variety)を組み合わせた『RFMCV』を用いて分析を行っていくことを勧めています」(飯塚氏)。

顧客理解のためのツール「Target Finder」を提供

 東急エージェンシーでは、このRFMCVを用いて顧客理解を推進するためのツールとして「Target Finder®」を提供している。飯塚氏はこのツールについて「誰が・何を・どれくらいを示す行動データを投入すれば、AIが自動で顧客のタイプ分けを行い最適なものを示してくれるクラスタリングツールです。事前の仮説は必要なく、結果を使って見込み客のリストアップなども簡単にできます」と説明した。

 飯塚氏は、Target Finderを用いて、顧客の行動履歴からニーズを把握して施策に活用する方法を具体的に説明。最後に「見込顧客を発見したり、誰に何をお勧めすればよいのかを容易に把握したりできるのがTarget Finderです。顧客理解を深化させ、施策の精度向上などにつなげてください」とアピールした。

自社開発のCustmer Activation Platform(CAP)を提供

  東急エージェンシーではデータドリブンマーケティングに力を入れており、複数のソリューションを自社開発している。ソリューション開発局の小柴亮威氏は、その1つとして「カスタマーアクティベーションプラットフォーム(Customer Activation Platform:CAP)」を紹介した。

株式会社東急エージェンシー ソリューション開発局 第1ソリューション開発部 小柴亮威氏

 前半で説明したように、CRMを行うためには、エンドユーザー固有のIDに性別、年齢、居住地といった「属性データ」と、購買単価、購買履歴や趣味嗜好、来店の記録などの「行動データ」が紐付いている状態が必要だ。ただ、ショッピングセンターや流通チェーンでは、必ずしもそうした環境が整備されているわけではない。そこで活用できるのがCAPだ。

 「CAPは、スマホアプリをベースにしたソリューションです。簡単にカスタマイズできるテンプレートアプリから、購買のログや行動のログを自動的に収集し、そのデータをマイクロソフトのPower BIを用いて可視化します。また、グラフや分析機能を用いて、ユーザーをセグメントごとに分け、テンプレートアプリに向けプッシュ通知やeメール、クーポンを送ることができます」(小柴氏)

  小柴氏は、CAPの機能として、テンプレートアプリを使ったアプリ閲覧ログや購買履歴、来店履歴などのデータ収集機能や、日毎にアプリから自動連携される決済・行動ログデータを可視化するダッシュボード機能、購買ショップや時期、タイミング、周期などRFMでのセグメント化と効果測定を行う機能などを紹介。そのうえで「CAPは、実店舗のデータ収集から分析、アクションまでをワンストップで提供するソリューションで、最短3ヵ月から導入できます。今後、クランピネスなどの機能も随時追加していきますので、CRM施策にお役立てください」とアピールして講演を締めくくった。


●お問い合わせ先

株式会社東急エージェンシー
東京都港区赤坂4-8-18
URL:https://www.tagc-solutions.com/
E-mail:info@tagc-solutions.com
 

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