[木内里美の是正勧告]

コロナ禍が露わにした「日本のデジタル化」の惨状、官民の巻き返し策は奏功するか?

2020年7月27日(月)木内 里美

コロナ禍は日本のデジタル化の遅れをまざまざとさらけ出した。この数カ月における政府・自治体や企業の対応を見れば、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み以前のレベルにあることが判明してしまった。最近打ち出された官民の施策方針(骨太方針2020、経団連DXレポート)には巻き返しを期待できるのだろうか?

お粗末な電子政府、そして民も官を笑えない

 惨状の事例には事欠かない。東京都における新型コロナウイルス感染者数は保健所から1感染者につき1枚の用紙でファクスを送り、毎朝9時の集計値(枚数勘定数)が発表されているという。データによる集計、共有からは程遠い。“アベノマスク”も記憶に新しい。まともに配布管理ができず、あらゆる住所のポストに投げ入れるという状況だった。筆者の場合、自宅に加えて事務所ビルにも配布されていた。

 国民1人あたり10万円の特別定額給付金も残念だ。2020年4月20日に閣議決定され、5月1日から申請を受け付けて給付が始まったが、筆者の居住区における7月15日現在の給付率は64%にとどまっている。全国では未受給世帯は581万世帯だそうだ。マイナンバーカードによるオンライン申請を始めたまではよかったものの、人手で申請データを見ながら住民基本台帳との照合確認作業などをするために余計に手間がかかり、自治体から送られてくる申請書での申請のほうが早いという事態も発生した。

 オンライン申請を途中で停止した自治体も多い。東京23区のうちオンライン申請を受け付けているのは7月15日時点で16区しかない。開始当初はオンライン申請のために新たにマイナンバーカードの交付を受けようとする人で、窓口に密ができる問題も生じた。それでも7月1時点での交付枚数率は17.5%にとどまる。

 教育分野では、休校期間の授業を補完するためにオンライン授業を行おうにも、自宅にインターネット回線がないとか、端末がないという生徒や学生がいて行き届かない。教師側も慣れていないので、まともな授業が出来ないというリテラシーの低さを露呈してしまった。大学におけるオンライン授業の実施率は97%という調査データがあるが、小中学校などは4月段階で5%未満というレベルである。

 企業も官のことを笑えないだろう。VPNの数が不十分など環境の準備もないままに在宅勤務やテレワークの実施に追い込まれた。在宅では処理できないプロセスも多く、ハンコ承認や紙の書類処理、あるいは電話番のための出社を余儀なくされた人が多い。また、テレワークといっても、慣れないWeb会議に追われて疲弊するのが実態で、勤務や業績を評価できないから、あるべき姿とは程遠い。

 これだけの“非デジタルな実態”が晒け出されてしまうと、さすがにデジタル対応への強いムーブメントが動き出しても不思議ではない。事実、日本経済団体連合会(経団連)は2020年5月19日に「Digital Transformation(DX)~価値の協創で未来をひらく~」というレポートを発行し、内閣府は7月2日に規制改革推進に関する答申書を総理大臣に提出。政府はこの答申内容を盛り込んだ「経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太方針2020)」図1)を7月17日に閣議決定した。

 これらは官民が掲げる最新のデジタル方針であり、少なくとも日本のデジタル化がどう進むかを示唆するものだろう。ということで2つの文書を読んでみた。果たしてコロナ禍が背中を押して日本のデジタル社会は進むのだろうか?

図1:骨太方針2020の概要の一部(出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2020)
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経団連DXレポートに見える頼りなさ

 経団連のレポートは政府の第5期科学技術基本計画(2016年1月)で提唱されたSociety 5.0に基づいて、持続可能な創造社会を構築するためにDXを推進していこうというスタンスでまとめられている。「狩猟、農耕、工業、情報に続く第5の社会形態として定義されたSociety 5.0は情報社会(Society 4.0)の進化した姿であり、当初は超スマート社会と呼ばれたが、経団連は創造社会と呼ぶことを提唱した」(序章)という。

 序章に続く本章は、「産業構造DX」「企業DX」「新たなルール・ガバナンスの確立」の3章立てでまとめられている。経団連のレポートなので総論型になることは致し方ないところだが、現状の認識やDX人材の認識に関しては、さすがによいところがある。昭和・平成時代に形作られた社会構造や慣習から脱却できない状況や、内需が7割近くで外国語が不得意、変化を好まない日本社会がDXを阻害していることを挙げ、日本らしいDXを目指すべきとしている。

●Next:経団連の掲げる「企業DX」と現実のギャップ

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