[麻生川静男の欧州ビジネスITトレンド]

重電からデジタル先端企業へ─ABBのデジタルツイン/AIを活用したロボットシステム:第16回

2020年8月13日(木)麻生川 静男

スイスに本社を置き、電力、重電、重工業を軸にグローバルで事業を展開するABB。同社が現在注力する事業の1つが、先端テクノロジーを駆使した産業用ロボットシステムだ。デジタルツインを活用し効率的で正確なメンテナンスを可能とし、さらには、AIとビッグデータを用いてロボット動作やメンテナンスの効率向上も成し遂げている。

 ABB(Asea Brown Boveri)は売上高約5兆円、従業員約14万人を擁する、欧州を代表する重電メーカーである。1988年にスウェーデンのアセア(ASEA)とスイスのブラウンボベリ(Brown, Boveri & Cie.)が合併し設立された。本社をスイスのチューリッヒに置く。

 2020年7月には、日立製作所に送配電システム事業部を約7500億円で売却しており、現在の主力事業は、ロボットを含むオートメーションと電力事業である。ロボットメーカーとしては日本のファナック、安川電機やドイツのクーカ(KUKA)と並んで世界4大産業用ロボットメーカーと呼ばれている。電力事業では、低炭素社会実現のためのシステム構築、具体的には電気自動車向け充電装置のインフラを提供している。

高まるロボットシステムへの「簡便・安全」ニーズ

 昨今、物流、建設、医療、食品、飲料のような業界で産業用ロボット活用のニーズが世界的に高まっている。市場のニーズの中でも、とりわけ中堅企業からの強い要望は簡便な運用と安全性である。ロボットシステムは、専門要員でなくともシステムの変更や運用・メンテナンスが行えるようでなければ採用できないという。また、安全面では、人とロボットの混在運用を前提にしたヒューマンロボットコラボレーション(HRC)への対応が必須である。

 さらには、工場だけでなく全社のデジタル化にも寄与できるシステムであることが望まれる。これら昨今のニーズに対して、ABBが打ち出したのが「RobotStudio」というロボットシステム開発環境である。

デジタルツインを活用したロボットの遠隔保守運用

 ロボットシステム運用において、多く問題となるのは、遠隔地からのサポートである。通常、遠隔地からのサポートはメールや電話が多いが、それだけでは実際のロボットを制御できない。例えば、現地で稼働するロボットの各コンポーネント/パーツのそれぞれの状況の把握などだ。

 ABBのRobotStudioはこの問題を解決しようとした。RobotStudioはロボットのシミュレーションツールで、かつオフラインプログラミングのソフトウェアでもある。

 RobotStudioは、現場で稼働しているロボットシステムのデジタルツイン(Digital Twin)を仮想(バーチャル)空間上に構築する。現場のデータを取り込み、現場のロボットと同じ動作を、その"双子"である仮想空間でも行わせる仕組みだ。これにより、現場で発生している現象についての精緻なシミュレーションが可能になり、現実でインシデントが起こる前に原因を特定することができる(写真1)。

写真1:RobotStudioではデジタルツインを活用して、現場のロボット環境の精緻なシミュレーションが可能だ(出典:ABB)
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 このデジタルツインの仕組みのおかげで、場所の制約を受けることなく操作やメンテナンス作業が可能となる。ロボットシステムが変更すればそれに合わせてデジタルツインを変更する必要はあるが、そうすることで将来発生するであろうインシデントに対し迅速に対応でき、ミスも減らせる。

●Next:ヒトとロボットの共存を前提にした「YuMi」の特徴と活用事例

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