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[技術解説]

システム増改築が生んだ“ITスラム”、解決策は「データセントリックで適材適所なアーキテクチャ」にあり

“伝説のITアーキテクト”中山嘉之氏が説く、ITアーキテクチャのセオリーと“正しい”データマネジメント

2021年8月31日(火)Darsana

デジタルトランスフォーメーション(DX)やデータドリブン経営を掲げてそれらに取り組む企業にとって前提となる課題がデータマネジメントである。全体計画を欠いた長年のシステム増改築が生んだ、複雑・無秩序な“ITスラム”に、IT部門はどんなデータマネジメントのやり方で立ち向かえばよいのか──。日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)主催の第52回定例セミナーに、アイ・ティ・イノベーションのシニアコンサルタント、中山嘉之氏が登壇。ITアーキテクチャのセオリーと“正しいデータマネジメント”の実践方法を指南した。
※本記事は、AnityAが運営するWebメディア「Darsana」が2021年2月12日に掲載した記事を転載したものです。

なぜ今「アーキテクチャの重要性」に着目するべきなのか

 大手製造業で長年に渡り、情報システムの企画や設計開発、運用に携わってきた中山嘉之氏(写真1)。同氏はこれまで業務を通じて培ってきたさまざまな経験や知見を基に、現在「データセントリックな適材適所のアーキテクチャ」を提唱、このコンセプトをベースにしたコンサルティング活動を展開している。これまでの活動の集大成として、2018年には『システム構築の大前提──ITアーキテクチャのセオリー』(リックテレコム刊)を上梓し、自身が編み出したアーキテクチャ設計の方法論を公開している。

写真1:アイ・ティ・イノベーション シニアコンサルタントの中山嘉之氏

 中山氏の講演は、同書にも記された「なぜ今、アーキテクチャ設計に着目すべきなのか」についての持論の展開から始まった(図1)。

 「近年の企業システムは巨大化・複雑化が進み、企業自身がそのすべてを設計・開発するのが難しい状況です。そのため、作業の多くを外部ベンダーにアウトソースするようになりましたが、さまざまなステークホルダーによってシステムの増改築が繰り返された結果、システムの整合性がだんだん取れなくなってきています。こうした結果、システムが本来、目指していたはずのゴールや理想形が見えにくくなってしまいました」(中山氏)

図1:なぜ今、アーキテクチャ設計か
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 そんな状況に、多くの企業が取り組むデジタルトランスフォーメーション(DX)、それに伴うシステム規模の拡大が拍車をかける。中山氏は、今、あらためて「企業システムが本来目指すべき姿」を明らかにし、「将来の青写真としてのアーキテクチャ」をきちんと描くことの重要性を説く。その際に留意すべきポイントの1つとして、同氏は「“プロジェクト”より“プロダクト”の成功を重視する」ことを挙げる(図2)。

 「ベンダーは、システムの開発プロジェクトが終わった時点で投資を回収しますが、ユーザー企業は、システムが完成してから3年、4年、5年と使い続けていく中で投資を回収していきます。そこでIT部門は“プロジェクト”としての成功を目指すのではなく、ユーザーに長く使われ続ける魅力的な“プロダクト”としてシステムの実現を目指さすべきなのです」(中山氏)

図2:“プロジェクト”より“プロダクト”の成功
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ITスラムの解消には都市計画が必要

 中山氏はITアーキテクチャの設計を、都市計画における「都市計画法」になぞらえて説明する。都市計画がおろそかにされたまま、無秩序に都市開発が進められると、徐々に都市周辺部にスラム街が生成されるようになる。そのため、長期的な視野に立って将来の青写真を描いた都市計画の策定が不可欠となる(図3)。

図3:ITスラムの解消には都市計画が必要
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 企業システムも同様に、将来のあるべき姿をアーキテクチャとしてきちんと定めておかないと、余剰に開発されて陳腐化したシステムが乱立する「スラム化」「ITスラム」の現象が発生してしまう、というわけだ。

 こうした問題を回避するためには、「適材適所を可能にするシステム構造」が重要だと同氏は説く。つまり、社内の業務ごとに「最適なシステムを過不足なく適材適所で配置」できれば、必要以上のものを作らずに済む(図4)。

図4:適材適所を可能にするシステム構造とは?
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 その一方で、ただ単に業務ごとに個別にシステムを導入していくだけでは、互いに孤立したシステムがばらばらに散在する「サイロ化」状態が生まれるだけだ。

 そこで中山氏が提唱するのが、「エンタープライズハブ(Enterprise Hub)」アーキテクチャの適用だ。各業務に「固有の色が付いていない全社共通のデータ」を、「共通マスターデータベース」「共通トランザクションデータベース」として切り出す。その上で、各業務システムは自身が内包する独自データベースではなく、この共通データベースをなるべく使うようにする。

 このエンタープライズハブアーキテクチャを採用することで、複数のアプリケーションが同じようなデータを重複して持ってしまったり、社内のあちこちでデータのコピー&ペーストが行われてデータが散らかってしまうような事態を回避できる。

●Next:EAに基づいてデータセントリックなアーキテクチャを実装するステップを詳しく解説

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※本記事は、AnityAが運営するWebメディア「Darsana」が2021年2月12日に掲載した記事を転載したものです。

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