ドイツのデジタル化ランキングで上位につけた先進企業の顔ぶれ:第38回
2023年2月2日(木)麻生川 静男
ドイツは欧州でダントツの経済大国でありながら、実のところ社会や国民生活のデジタル化はかなり遅れていて、G20の中でも下位グループに甘んじている。一方で、業界や企業レベルで見ると、早期からデジタルトランスフォーメーション(DX)に着手し、世界のリファレンスになっているような先進企業もある。先日、調査会社の独Staticaから、ドイツに本社を置く企業3000社のデジタル化の状況を調査した「ドイツのデジタル化調査2022」レポートが発表された。その総合ランキングと、同国の代表的な5業界のランキングを紹介しよう。
国際ランキングの中でのドイツのデジタル化レベル
まず、国際的なデジタル化ランキングについていくつか触れておこう。独ITコンサルティングファームのMHPとミュンヘン大学は、共同で世界の企業のデジタル化について調査し、その結果を「Industrie 4.0指標2021(Industrie 4.0 2021)」として公表している。関連して、産業専門メディアである独Industry of thingsは同レポートの調査結果を他の調査結果と合わせて、ドイツに本社を置く企業のデジタル化の状況を分析している。
Industrie 4.0指標2021でデジタル化のランキングで上位を占めたのは中国と米国に本社を置く企業である。DACH(ドイツ、スイス、オーストリア、注1)の企業は下位グループに属し、前回調査(2020年)より一層悪くなっている。つまり、この3国は世界的に見てデジタル化が停滞している。
注1:ドイツ、スイス、オーストリアの3国はいずれもドイツ語を母国語とし、DACH(Deutschland, Austria, Confoederatio Helvetica〈Switzerland〉)と呼ばれている
また、別の調査だと、「デジタル躍進レポート2021(Digital Riser Report 2021)」では、ドイツは、G20加盟国の19カ国中17位。スイスのIMDが公表している「デジタル競争力ランキング2021」ではドイツは2016年の15位から、2021年は18位まで下落している(関連記事:「Small Smart Nations─小さく賢く機敏な国々」の成果が示すもの)。
Industry of thingsは、調査結果に見るドイツ企業のデジタル化の状況について、「こういった結果にはなったが、まったく絶望的というわけではない。ドイツにはDXをすでに達成している会社も多い」と述べている。
それを裏づけるものとして同メディアは、調査会社の独Staticaによる「ドイツのデジタル化調査2022」(Digitalisierung In Deutschland 2022)」を基に、DXあるいはデジタル化を達成している企業や業種を紹介している。その調査期間は2022年6~9月で、調査対象はドイツに本社がある26業種3000社である。評価はStaticaによる評点と調査企業の社員アンケートによる評点を合算したものだ(100点満点)。
Staticaの評点は、社内のデジタルプロセスの進み具合、世間的なプレゼンスの評価の2つで構成されている。社員に対するアンケートでは、調査対象企業の正社員・パート社員の計4万人に対してオンライン調査を行っている。質問項目は、社内のデジタル化や社内インフラの様子、デジタル新技術や方法論の受容度、新しいツールやプログラムの使い方に関する社内教育の充実度などである。また、DXを管轄する責任者が任命されているかどうかの運営面も評価の対象となる。
以下、ドイツのデジタル化調査のランキング結果を引用し、紹介する。1つは総合ランキングで、残り5つは業界別(同国の5つの代表的産業)のランキングである。上位には、日本ではあまり知られていないところも含めてデジタル先進企業の名前が並んでいる。
●Next:ドイツ産業界を牽引するデジタル化先進企業ランキングを一挙紹介
会員登録(無料)が必要です
- 1
- 2
- 次へ >
- EU議会が可決した「AI規制法」、ドイツ国民から賛否両論:第50回(2024/06/20)
- 欧州委員会が描く次のデジタル産業革命「Industrie 5.0」を読み解く:第49回(2024/04/15)
- ChatGPTを用いた良品/不良品判定─最新AIの活用に積極的なボッシュ:第48回(2024/02/29)
- ドイツの技術者が魅力的と感じる8つの都市、それぞれの特徴:第47回(2023/12/27)
- デジタルで業務を、働き方を変える─ドイツの“先進中小企業”から学べること:第46回(2023/11/06)
ドイツ / 欧州 / 市場調査 / Industrie 4.0