我々日本人には古くから「恥」を重んじる文化があり、失敗は恥であると捉えられている。恥をかく失敗は生きる上でのリスクであり、失敗を避けるために安全で確実な道を選ぼうとする。しかし、これでは世界の競争に後れを取って当然だ。なぜ、失敗を恐れるのかを突き詰めて考えてみたい。
15歳で失敗を恐れている日本人気質
OECD(経済協力開発機構)では、「PISA」と呼ばれる生徒の学習到達度調査を実施している。Programme for International Student Assessmentの略で、3年ごとに15歳の学生を対象にした調査だ。主要3項目は読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー。ほかに、国際的な理解や価値観を評価する「グローバルコンピテンス調査」もあるが、こちらには日本は参加していない。
PISAには、生徒に対して詳細に質問するICT活用調査や生徒質問調査があり、公開されている直近(2018年)の調査データに興味深いものがあった。生徒質問調査61項目の46番目に以下の3つの質問をして、失敗を恐れる程度を調査した結果である。
①失敗しそうなとき、他の人が自分のことをそう思うのかが気になる
②失敗しそうなとき、自分に十分な才能がないかもしれないと不安になる
③失敗しそうなとき、自分の将来への計画に疑問を持つ
OECD諸国の中で日本は最も失敗を恐れる程度が高く、男性より女性にその傾向があるそうだ(図1)。傾向として、平均能力の高い国ほどその傾向があるという。他人から見られる目、自己能力に対しての自信のなさ、ひいては将来まで悲観的になる。生を受けてたった15年でこのように消極的で自信の無い心を持つことは、その成長過程での経験が影響していることは間違いない。このような現実を突きつけられると、日本の弱点との関連を考えざるをえなくなる。
図1:Index of fear of failure(出典:OECDライブラリ)拡大画像表示
失敗を恐れる要因を考察する
まず、「日本人は失敗を恐れる」という仮説を立て、それを検証するための要因を挙げてみたい。1つは日本人の基本的な気質にあるかもしれない。謙虚、控えめ、でしゃばらないなど、よしあしは別としてこの傾向は強い。見方によっては美徳になるが、競争社会において世界と伍して戦うには弱みになる面があるのは否めない。
この基本気質から生じる積極性のなさはいろいろなところに現象として現れる。会合やイベントを開催すれば皆、後ろの方から座りたがる。大学からの講師依頼を受けて授業に行くと、生徒たちも後ろから座り、前の席が空く。セミナーでも教室でもきっかけを作って促さないと積極的に質問をしない。街頭インタビューを受けても、最近の若者はきちんと話すようになってきたが、海外の若者のように自分の考えを流暢に訴える姿と比べると違いを感じてしまう。
ディベートも避けようとする。これは教育期間中に訓練を受けていないことも要因になっていると思われるが、そもそもコミュニケーションが得意でない。以心伝心、言わぬが花、背中が語る、場の空気を読む、忖度する──などはコミュニケーション力のなさを補う独特の意思交流なのかもしれない。ディベートは争いではないけれど、争いごとを避け協調と安定を尊ぶ伝統的な文化や価値観が好まないのだろうか。そんなこんなで、最近ではコミュ障(コミュニケーション障害)という言葉が一般に定着した。
出る杭を打つ風潮も見逃せない。単なる羨望や嫉妬心からではなく、協調を尊ぶあまり、異質を嫌い排除しようとする必然的な行為なのかもしれない。出る杭ばかりでなく、裏を返せば失敗したら叩かれるだろうという恐れにつながる。日本人は、自分が他人にどう見られているかも大変気にする民族だと思う。世間を気にする背景には強い同調圧力もある。
同調圧力はコロナが蔓延した時期にも遺憾なく発揮され、自粛やマスク着用に強い圧力をかけて自粛警察と呼ばれるような人たちも現れた。総じて言えば自己認識が弱いのではないかと思う。自分に自信が持てないと言ってもいい。個に自律がないのだ。これは日本の教育や人材育成の弱点に思える。
●Next:失敗の捉え方を変えて、イノベーションにつなげよう
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