[オピニオン from CIO賢人倶楽部]

キャリアアップに熱心で行動が早い!─ベトナム再訪にまつわる話あれこれ

CIO賢人倶楽部 会長 木内里美氏

2024年8月13日(火)CIO賢人倶楽部

「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、CIO賢人倶楽部 会長の木内里美氏によるオピニオンである。

 筆者は2023年、ベトナム最大のITベンダーであるFPTソフトウェア(FPT Software)の開発拠点を訪問した(関連記事日本のソフトウェア会社はベトナムに勝てない─その決定的な理由)。

 FPTの本社は首都ハノイにあるが開発拠点はダナンにあり、そこだけで1万人もの技術者がいる。実際に見学して話を聞き、その規模もさることながら人材育成の仕組み、施設や福利厚生、それに社内教育の充実ぶりには驚かされた。ステップアップやキャリアップのための転職が多いベトナムでも、同社は「離職率が低い」とのことだが、それも納得だった。

 国策と勤勉なベトナム人気質が相まって価格と品質のバランスにすぐれるベトナム企業を、アジアのオフショア開発先として選ぶ日本企業が増えている。FPTにかぎらず、日本に進出するベトナム企業も増えている。多くはハノイに本社を持ち、ダナンやホーチミンにも拠点を置いている。

 FTP以外のベトナムのIT企業も見たい──。根っからの好奇心・探究心から、2024年6月、FPTに次ぐ規模、つまりベトナム2位のCMCグローバル(CMC Global)というベンダーを訪問してきた。幹部クラスはFPTソフトウェア出身者が多く、キャリアアップと独立心の強さがうかがえる。ベトナム国内の企業に対してもDX支援策が制度化されていて、協力するIT会社への免税措置などは日本でも政策的に取り入れたい仕組みである。

LinkedInで筆者のCMC訪問を察知、すぐに連絡してきた企業

 CMCグローバルの報告は別の機会にするとして、ベトナム訪問時にLinkedInを通じてアプローチのあった、ある会社について言及したい。HBLAB JSC(HBLAB Joint Stock Company)という、ベトナムのオフショア開発ベンダーの日本法人、エイチビーラボジャパンだ。LinkedInから筆者のCMC訪問を察知したようで、聞くとCMCからの転職者だった。CMC訪問などから帰国した後、HBLAB日本法人を訪問し、事業内容やオフショア事情などをヒアリングしてきた。

 HBLABは2015年設立と社歴はまだ浅く、社員は540人と小規模である。ビジネスのターゲットを日本に絞っていて、社員の8割は日本向けに活動しているという。日本法人の社員は営業と一部の管理職を除くと、クライアント会社に常駐している技術者とのことだ。

 ホーチミンにいる時にアプローチしてきたジャンさんとホアイさんはエイチビーラボジャパン所属の営業担当者である(写真1)。FPTもCMCもそうだったが、女性・若手の営業職の活躍が目覚ましいようだ。若手といっても前職があり、前述のように2人ともCMCから転職したという。

写真1:HBLABのメンバーと筆者

 理由を訊くと、ベトナムでも会社組織は階層化されていて上位職に就くには時間がかかる。規模は小さくても、早くポジションと権限を得て経験を積みたいからだという。キャリアアップのための転職をいとわず、向上心が高い。加えてLinkedInで見ただけの筆者のCMC訪問をきっかけに連絡を取り、間を置かずに話をする──。その意欲と行動力には、見習いたいものがある。

 オフショア開発の課題はコミュニケーションと品質の担保だと言えよう。HBLABもその認識は強く持っていて、少なくとも営業やPMの日本語能力、英語能力は高く、品質管理にも力を入れているのがわかる。丸投げではなく協働・共創型でシステム開発できる事業会社なら、このくらいの規模のオフショア会社が面白いのではないかと思う。

●Next:ベトナムのIT力を支える、手厚い教育・育成

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