武田薬品工業が製造部門のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進めている。工場間でベストプラクティスを横展開しているほか、各工場のデータを収集・集約し、予知保全や各種データ分析に役立てている。2025年3月7日に開催された「データマネジメント2025」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)に、武田薬品工業 グローバルマニュファクチャリング&サプライ ジャパン 戦略企画部 データサイエンスグループ ヘッドの深川俊介氏は、製造現場における同社の取り組みを紹介した。

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武田薬品工業が製造部門のDXを推し進めている。工場間でベストプラクティスを横展開しているほか、各工場のデータを収集・集約し、予知保全や各種データ分析に役立てている。
武田薬品工業 グローバルマニュファクチャリング&サプライ ジャパン 戦略企画部 データサイエンスグループ ヘッドの深川俊介氏(写真1)は、製造現場における同社の取り組みを紹介した。
武田薬品は医薬品の安定供給、生産性向上、環境負荷軽減を企業理念として掲げている。製造部門においては、「Factory of the Future」(未来の工場)を実現するため、大きく、「デジタル教育の強化」「業務プロセス改善」「自動化」の3つに取り組んでいる。
深川氏は「『未来の工場』を実現するためには、ベストプラクティスを全社に浸透させるスケーラビリティも必要になる」と述べた。このために同社は、各工場が抱える課題やニーズを吸い上げ、解決策を含めてグローバル全体に展開する仕組み作りに注力している。「課題への解決策があれば、課題を抱えている工場に横展開する」(深川氏、図1)。

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解決策を工場間で横展開するためのシステムとして同社は、グローバルマーケットプレースを用意している。ビジネスの課題に合う解決策が見つかれば、「カートに入れて購入する」ような簡単な操作性を持つUIを介して、該当の解決策を開発した担当者へと連絡が行く仕組みである。これにより、解決策を欲する人と、提供できる人を、直接つなぐ。
解決策を持っている工場がない場合は、新規に開発する。開発は内製で実施する。こうしたケースでは、以前は外部ベンダーに開発を頼んでいた。しかし、「競争力を高めるためには、内製化によって俊敏性を確保する必要がある」(深川氏)と力説する。同社では現在、内製のための仕組みと体制が整備されつつある。
同社は、各工場のデータを集約して活用するためのデータ統合基盤も構築済みである(図2)。各工場で稼働している複数の製造ラインから、「時系列の監視データ(温度や圧力など)」「製造した製品の数」「品質試験の測定データ」などを収集し、Amazon Web Services(AWS)上に構築したデータレイク/データウェアハウス(DWH)で管理する。

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収集したデータは、製造ロット番号などでひも付けした状態で管理しているため、例えば、原材料の納品から、複数の製造工程を経ての出荷・販売にいたるまでの一連の流れを追跡できる。また、オフィスで勤務する担当者にデータを入力してもらうこともあり、この際に統一されたフォーマットでデータを収集できるように、データ入力テンプレートも用意した。
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