政府の情報を国民に正しく伝える「官報」の発行を担う国立印刷局が、信頼性の高いデータを軸に、行政分野でのデータ活用を働きかけている。極めて正確なデータ生成・管理のノウハウは、デジタル社会を支えるベース・レジストリの運用にも生かされている。2025年3月7日に開催された「データマネジメント2025」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム〈JDMC〉、インプレス)に同法人 理事の足立寛子氏が登壇し、同法人の事業や行政データ活用の展望を語った。
独立行政法人国立印刷局は、1871年7月に大蔵省の一部門である紙幣司として設立され、2021年には創立150周年を迎えた、財務省所管の公共機関だ。本局を東京都港区に、研究所を神奈川県小田原市に置くほか、全国で6つの工場を運営。職員数は3995名を数える。
同法人の業務の7割を占めるのが、紙幣(日本銀行券)の製造である(注1)。2024年7月に発行を開始した新紙幣には、特殊な印刷方式や透かし、ホログラムなど、同法人が研鑽を重ねてきた高度な偽造防止技術が注ぎこまれている。また、旅券(パスポート)や郵便切手、印紙・証紙など、同じく偽造が許されない印刷物の製造も担っている。
注1:貨幣の鋳造は、独立行政法人造幣局が担う。
これらと並ぶ重要な業務が、政府の情報を国民に伝えるための「官報」の発行だ。官報の役割は3つに大別できる。制定・変更された法令等の公表を指す「公布」、国の決定事項や活動内容を発表する「公示」、そして国民や法人等の権利義務の取得や喪失に関する重要事項を知らせる「公告」だ(図1)。これらの役割ゆえに、国立印刷局 理事の足立寛子氏(写真1)は「厳格な正確性が要求される」と語る。

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