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中国電力、石炭火力発電所の燃料運用計画をAIで策定、90分で4000通りの混焼パターンを評価

2025年11月10日(月)IT Leaders編集部、日川 佳三

中国電力(本社:広島県広島市)は、島根県浜田市の同社三隅発電所において、石炭火力発電燃料の運用をAIで高度化する「炭質評価システム」および「石炭サイロ運用支援システム」を構築し、運用を開始した。複雑な運用制約と熟練者のノウハウを取り込んだ独自の最適化アルゴリズムにより、最適な石炭・バイオマス燃料のブレンド比率の提案を行う。システム構築を支援したエクサウィザーズが2025年11月7日に発表した。

 島根県浜田市にある中国電力の石炭火力発電所、三隅(みすみ)発電所(写真1)は、石炭と木質バイオマスを燃料とする日本最大級の火力発電所である。熱効率の高い超々臨界圧発電方式(USC、注1)を採用した省資源型の発電所としてCO2排出量の削減に取り組んでいる。

注1:超々臨界圧発電(USC:Ultra-Supercritical Power Generation)は、石炭火力発電において、蒸気を従来の高温高圧よりもさらに高い圧力と温度で利用し、発電効率を高め、環境負荷の低減を図る技術。

写真1:島根県浜田市にある中国電力三隅発電所(出典:中国電力)

 三隅発電所では燃料の運用計画を、限られた熟練社員が18基ある貯炭サイロの日々の受払・貯蔵状況を考慮しながら立てていた。

 この運用は発電所の安定運転やコスト管理に直結する重要な業務だが、属人化と計画品質の平準化が課題になっていた。また、CO2削減/脱炭素化の流れを受けて、バイオマス燃料の混焼拡大が求められており、それが計画立案を一層複雑なものにしていたという。

 そこで同社は、エクサウィザーズの支援の下、燃料の運用計画をAIで高度化するシステムとして、「炭質評価システム」および「石炭サイロ運用支援システム」を構築した。両システムが相互に連携して燃料の運用を最適化する仕組みで、アルゴリズムには、熟練社員の知見や現場の複雑な制約条件を数理モデルとして組み込んでいる(図1)。

図1:「炭質評価システム」と」石炭サイロ運用支援システム」の概要(出典:エクサウィザーズ)
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 炭質評価システムは、石炭の銘柄ごとの発熱量や調達価格などを踏まえ、ボイラーの安定燃焼を維持しつつ経済性を考慮した石炭・バイオマス燃料のブレンド比率を提案する。バイオマス燃料を混焼させた案も出せる。

 同社によると、保管する石炭に合わせて40通りのブレンド案を作成するのに、熟練社員でも約2~3日はかかるという。それにAIを適用すると、90分で約4000通りの混焼パターンを評価できる。新規の石炭銘柄における利用可否と最適ブレンドを迅速に評価できるようになり、燃料調達のリードタイム短縮を図っている。

 石炭サイロ運用支援システムは、炭質評価システムが算出した約4000通りのブレンド比率から最適解を選び、石炭受払計画を自動で策定する。3カ月分の計画策定に約1日かかっていたのが30分程度で完了するようになった。

 両システムによる燃料運用計画は、18基あるサイロの受入・払出からボイラーへの投入順序まで網羅する。補修作業時の石炭設備の使用可否、石炭船のサイロ空き待ち滞船の低減、低品位炭の優先消費といった、現場のさまざまな条件も計画に反映できるという。

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