[製品サーベイ]

電源オフのPCも自在に管理、運用負荷を軽減─インテル vProテクノロジー対応PC/ソフトウェア製品比較

2009年4月8日(水)IT Leaders編集部

リモートでの電源投入や仮想化によるセキュリティ強化などの機能を提供する基盤技術としてインテルが市場に投入した「vProテクノロジー」。ここにきてvProを搭載するPCや、この機能を生かす運用管理ツールのバリエーションが増えてきた。vProがどんな技術なのかを解説するとともに、対応製品の最新動向を探ってみよう。

「勤務時間外など、PCの電源がオフの状態でもリモート管理できる利便性に注目した」。パイオニアの中村 正彦・情報戦略部統括部企画グループ副参事は、vPro搭載PCを採用した理由をこう話す。社内にはすでに2000台を導入済み。同社のほかにも、富士フィルムや聖路加国際病院といった大手が続々とvPro搭載PCの導入を始めている。

社内に散在する大量のPCを集中的に管理し、運用にかかる負荷を可能な限り軽減したいというのが、これらの企業に共通するvPro採用の理由だ。障害を起こしたPCをメンテナンスする、OSやアプリケーションのパッチを当てる…。現地に赴いての作業は手間も時間もかかるし、様々な事象への対応をうたうリモートメンテナンスツールを全PCに導入するには費用もかさむ。仮にそうしたツールを導入していても、そもそも対象PCのOSが障害を起こしていたり、電源がオフになっていたりするとメンテナンスできないといった問題もある。

こうした課題を解決するものとして注目されているのがvProである。

インテル製チップが必須
技術要件も規定

vProは、PCをリモート管理するのに必要な機能などをファームウェアとしてハードウェア(マザーボード)上に実装する技術的な枠組みを指す。BIOSやOSとは独立して動作し、この点ではPC本体の中に、運用管理のための小さなPC(インテリジェントな専用モジュール)が入っていると見ることもできる。インテルが開発し、最初に発表したのは2006年4月のこと。その後、機能拡張を重ね、08年9月には第3世代のvProをリリースした。

実体は複数の要素技術の集合体だ。インテルが提供するチップならびに技術要件をセットとして採用したものが「vPro搭載PC」と呼ばれる。

最新のvProを細かく見ると、デスクトップ向けの「vPro テクノロジー インテル Core 2 プロセッサー」と、ノート向けの「vPro テクノロジー インテル Centrino」シリーズがある。どちらも3つのチップと、3つの要素技術により構成する(図)。

画像:vPro搭載PCに求められるハードウェア要件と要素技術

ハードウェア要件は、例えばデスクトップ向けならプロセサにCore 2 Duo、チップセットにQ45 Express、LANコントローラに82567LMギガビット・ネットワーク・コネクションというインテル純正品の採用が条件となる。

要素技術には、クライアント管理支援技術の「Intel Active Management Technology(Intel AMT)」、仮想化支援技術の「Intel Virtualization Technology(Intel VT)」、セキュリティ技術の「Intel Trusted eXecution Technology(Intel TXT)」の3つがある。これらの一部はチップの中にロジックとして組み込まれているほか、マザーボード上のフラッシュメモリーに内蔵するなどして実装する。

リモート管理という観点でvProの肝となるのがIntel AMTである。ネットワーク経由での電源オン・オフや、PC内部のシステム構成情報の取得、BIOS画面のリモート表示といった、PC管理に重要な役割を果たす機能を提供するものだ。

例えばこれまでも、ネットワーク越しにPCの電源を投入する手法としてWOL(Wake On LAN)があった。ただし、ネットワーク構成においてセグメントが異なるとマジックパケットと呼ぶ起動信号がうまく到達しないという問題が起こりがちだった。これに対し、PC本体の電源投入状況に関係なく、常にファームウェアレベルで通信する仕組みを採るvProは確実に電源を制御できる。つまりPCが眠っていても、vProは常に目を覚まして会話できる状態になっている。これを実現しているのがAMTである。

ペンタブレット型も登場
選択肢広がるvPro搭載PC

PCメーカー各社はすでに多数のvPro搭載PCを市場に投入している(前ページの表1)。当初はデスクトップ機が中心だったが、今ではノートPCのバリエーションも広がっている。目新しいところでは、ペンタブレット型のPCの登場が挙げられる。工場や病院、学校などで利用者が持ち歩きながら操作することを想定したものだ。

画像:各社の主要なインテル vPro テクノロジー搭載PC

初期のころ、vPro搭載パソコンは、同程度のスペックを備えた一般のPCに比べて数万円高くなることが多く、割高感を感じるユーザーの声もあった。今も価格差はあるが、その差は数千円〜1万5000円程度と縮まってきており、価格面でのハンデはなくなってきている。またハイエンドモデルに限らず、普及価格帯のエントリーモデルにもvPro搭載製品が増えつつある。

価格がこなれてきたことと、選択肢が増えてきたことは、ユーザーにとって朗報だろう。

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