この連載コラムでは、IT製品を提供しているいわゆるメーカー側のテクニカルサポート部隊と、製品を利用している顧客(ユーザー企業)ならびに製品の導入/支援/管理を手がけるパートナー企業との間の関係を、敵対関係から協調関係に導いていく具体的方法に関して、10の例を用いて述べていく。
まず現状について整理しよう。業務システムが何らかの障害を起こしてしまった場合、ユーザーやパートナーのシステム管理者にとっては、障害でシステムに影響を出してしまった責任と、上司を含む会社側への説明責任、また、早期の復旧だけでなく根本原因の究明、今後の対策、問題を発生させたことに対する改善点の提示等に多くの時間を割かざるを得ない。一方、メーカーのテクニカルサポートの担当者はというと、顧客やパートナーからの「迅速な障害解決」のプレッシャーと、どうしても時間のかかる原因究明、また、なかなか動かない開発部隊との間で板ばさみになって苦しんでいる。
このような状況から脱せないままでいると、顧客側の製品選択はどうしても保守的にならざるを得ず、責任回避の観点(言い方を変えれば、障害が発生したときに言い訳ができるということ)から、有名なSI会社に全てを任せてしまう、あるいはブランドのある製品を選択してしまうという「思考停止状態」に陥る。また、顧客およびパートナーのシステム管理者とテクニカルサポートとは、どうしても責任問題に発展しがちな関係、報告義務を果すための理由作りの関係、はたまた何とか言いくるめるための関係という由々しきものに成り下がってしまう。
このままではいけない。このような状況を打破し、テクニカルサポートと、顧客およびパートナーのシステム管理者がお互いの信頼関係を構築し、より良い製品、より高い品質を目指して取り組んでいくことこそが重要で、これが結果的にはIT業界全体の改善につながるものと信じている。
この連載では、以下の10のポイントについて、顧客およびパートナーのシステム管理者とテクニカルサポートの間で起こる典型的な問題と、その解決策を示す。さらに、建設的な協調関係を築いていくにはどうしたらよいかを掘り下げていきたい。
01 スキルのある人に早くたどり着く方法
テクニカルサポートに問い合わせした時、なかなか結論が出ずにいらいらした経験を持つ人は多い。「もっとレベルの高い人を出して下さい」と思わず苦情を口走ることもある。スキルの低い人に当たってしまったのが不運というわけではなく、説明の方法、また、テクニカルサポートの体制に基づくアプローチというものが必要になる。ここでは、どのようにすれば問い合わせ内容に合ったスキルの人に早くたどり着くことができるかを示そう。
02 なかなか理解してもらえない内容を素早く伝える方法
聞きたい内容がなかなか理解してもらえない。「話の分かる人に代わって下さい」と言ってしまうこともしばしばだ。テクニカルサポートもスキルの高い人だけではないし、また、ある程度の手順や作法に則らないと上手く伝わらない場合がある。テクニカルサポートに問い合わせを行う場合、どのようにすれば的確にかつ素早く内容を伝える事ができるかを述べる。
03 優先順位を上げる方法
「本件は、優先度3で対応させていただきます」とテクニカルサポートから告げられた場合、「なぜ3なのですか? 困っているので最優先で扱ってください」と不満を持つ場合がある。顧客にしてみれば最優先で扱ってもらいたいのは山々なのだが、テクニカルサポートにも事情がある。そもそも優先順位とは何なのかを明確にし、優先順位を上げるためのアプローチ方法を示す。もちろん、むやみに上げることは無理だが、適切な手順が理解できるはずだ。
04 電話やメールでの的確な問い合わせ方法
テクニカルサポートの基本的な問い合わせ方法は、電話かメールである。しかし、メールでは意図がなかなか伝わらない場合も多いし、電話では伝えられる情報量が少ないという問題がある。ここでは、電話とメールの使い分けの指針を整理してみる。
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