携帯電話がビジネスの必需品となって久しい。昨今はPC並の機能を持つ「スマートフォン」と呼ばれる高性能端末も数多く登場。その中でも高い注目を集めるのが、米アップルの「iPhone」だ。iPhoneの性能を生かした専用アプリケーションも充実しつつある。
「社内メールを外出先や出張先でも確認できるようになり、ワークスタイルが劇的に変わった」─。プライスウォーターハウスクーパース(旧ベリングポイント)の総務部マネージャーである杉山優子氏は、iPhone導入の効果をこう強調する。
iPhoneの大規模導入案件の国内第1号となった同社は、社内の固定電話を撤廃し、約1000人におよぶコンサルタントや役員の標準電話端末としてiPhoneを採用。会議の開催通知や決裁承認などの社内メールも即座に確認できるようにし、業務プロセスの迅速化に結び付けている。その後もiPhoneの国内企業への大規模導入事例は相次ぎ、最近ではファーストリテイリングが2010年3月に約1200台を導入している。
iPhoneが人気を集める最大の理由はその操作性の高さだ。タッチスクリーンを指でなぞればその方向にスクロールし、画面に置いた2つの指の間隔を広げれば拡大、閉じれば縮小できる。こうした直感的な操作性は、他の携帯端末の1歩先を行く。
こうした性能を生かしたソフトウェアの流通を促進するため、アップルは自社のコンテンツ配信サービス「iTunes Store」の中に、iPhone向けアプリケーションの配信コーナー「App Store」を設けた。現時点で15万本以上のアプリケーションを揃えるApp Storeには、OracleやSAP、IBMといった業務ソフトウェアベンダーもこぞってiPhone用アプリケーションを提供している(表)。ここでは、充実する業務用iPhoneアプリケーションの動向を分野別に詳説する。
(1)業務アプリケーション
閲覧中心の軽快アプリが主流
業務アプリケーション分野の2大ベンダーであるSAPとOracle。両者の提供するiPhoneアプリケーションは閲覧機能を主としたビューアーが中心だ。編集機能を備えたものでも、可能な限りボタンのタッチや項目の選択といった簡単な操作に限定する。「ユーザーがiPhoneに求めるのは多機能ではなく、移動中に片手で簡単に情報が得られる操作性の高さ」(日本オラクルの瀬尾直仁シニアマネジャー)という考え方に基づくものだ。
SAPは「現在開発中のすべてのアプリケーションは、iPhoneを含むスマートフォンで利用することを前提にしている」(SAPジャパンのイノベーションデザイン&ディベロップメント担当の馬場 渉氏)という。同社が提供するiPhoneアプリケーション第1弾が「SAP BusinessObjects Explorer for iPhone」(画面1)だ。
画面はグラフを中心とした構成で、グラフの部分をタップするだけでドリルダウン分析ができるなど直感的な操作を重視した。データ分析はBIツール「SAP BusinessObjects Explorer」で実行し、iPhoneにはデータを蓄積しない。SAPは現在、開発中の人間関係管理システム「SAP Social Network Analyzer」にも専用のiPhoneアプリケーションを用意している。
Oracleは、BIや顧客関係管理(CRM)といったアプリケーションごとに別々のビューアーを用意している。「余分なメニューを徹底的に省くことで、iPhoneの限定された表示領域で迷わず情報を得られる」(日本オラクルの瀬尾氏)。iPhoneの機能を生かしたアプリケーションの1つが、保守作業員向けアプリケーションの「Oracle Enterprise Asset Maintenance Workbench」だ。iPhoneのGPS機能を利用し、保守作業員が自分の位置と保守対象の資産位置をGoogle Maps上で確認できる。作業対象の資産を一覧したり、作業終了報告をすることも可能だ。
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