GDOは予定通り、2010年8月末に会計をはじめECや顧客管理、ゴルフ場予約といった各システムの基本設計を終えた。同社らしいユニークな取り組みと言えるのは、そのまま開発フェーズになだれこむのではなく、9月の1カ月間を設計の検証作業に充てたことである。
全システム機能を横串チェック
その作業の中心が、個別に設計されたシステムが正しく連携動作するかを机上で検証する、いわゆるウォークスルーだ。新しい業務フローのシナリオをもとに基本設計をレビューし、漏れや重複はないかを確認する。そのために各プロジェクトの業務担当者や開発担当者、ツールベンダー合わせて約20人が、アビームコンサルティングの会議室に集合。丸2日を費やし、「ECでの新品注文」「注文変更」「ゴルフ場の新規予約」「ポイント加算」など、合計13のケースシナリオをチェックした。
例を挙げよう。「ECによる新品注文」というケースシナリオでは、新規顧客登録に始まり、注文確定や在庫引き当て、出荷指示、そしてポイント付与といった17の業務フローが発生する。それぞれのフローはさらに、複数のシステムにまたがる129の機能から構成される。これらシステム機能を、各プロジェクトが持ち寄った設計書や画面設計書、インタフェース定義書と付き合わせながら1つひとつ検証したわけである。
ウォークスルーと並行して、開発後の全体テストスケジュールも立案した。2011年7月の全面稼働というタイミングは変更できない。そこから逆算すると、2011年2月には総合テストや移行リハーサルに着手する必要があった。さらに逆算して2010年11月に各システムの開発および単体テストを終え、2011年1月にはシステムの機能がうまく疎通するかの結合テストを開始することを決めた。「開発期間は2010年10月から2カ月」というスケジュールが、ここで確定した。
非常にタイトに見えるスケジュールだが、志賀智之IT戦略室長は「設計と開発を並行させるという当初の予定を変更し、3カ月かけて基本設計をじっくり練り上げた。検証も実施したので、大幅な手戻りが発生するリスクを低減できた。次は業務移行、データ移行におけるリスク低減にフォーカスする」と、この1カ月の成果に自信を見せる。一般には、投入(確保)するエンジニアの工数=開発費を意識して、設計が完了したものから順次、開発に着手しがち。それをあえて抑えることで、むしろ開発期間を短縮、あるいは順守できるというわけだ。
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