一般にノートPCは衝撃に弱く、水やホコリが飛散する場所での利用にも向かない。だが現実には、工場内などの条件の悪い環境でもPCを使いたいというニーズは根強い。この声に応えるのが、耐衝撃や防滴、防塵仕様を施した「堅牢PC」である。
土地の測量や工場の生産ラインなどの作業現場にPCを持ち込みたいというニーズは根強い。作業しながら図面や生産数などをリアルタイムで確認したいからだ。しかし現場によってはホコリや金属粉、水や油などがPCに降りかかる危険性を伴う。移動しながらの作業も多く、誤ってPCを落としてしまうこともありがち。PCが故障する要因がそこかしこにある。
そこで劣悪な環境でもPCを利用できるようにと開発されたのが「堅牢PC」だ。ここでいう堅牢PCは、液体やホコリの侵入を防ぐほか、ある程度の衝撃を受けたり高温/低温環境で利用したりしても問題なく動作するものを指す。工事現場や工場のほか、自動車に搭載したり医療/災害現場で活用したりするケースも増えているという。
主要な堅牢PCを表1にまとめた。作業現場に据え付けて利用する組み込み型やデスクトップ型、携帯できるPDA型もあるが、本稿では汎用性の観点からWindows(Embedded/Mobile/CEを除く)を搭載できるノート型を取り上げた。
なお、この分野ではデルが2010年2月に発表した「Dell Latitude XT2 XFR」が注目を集めたが、今後は製品供給を停止する方向となっている(後継機を市場投入するかどうかは原稿執筆段階では未定)。
水やホコリを防ぎながら排熱する仕組みに工夫
一般的なノートPCの場合、プロセサやメモリーの熱を排出するためにファンを備える方式が主流だ。だが、作業現場では吸排気口から金属粉などを吸い込んで、回路がショートする可能性がある。そこで堅牢PCは、ホコリや水が侵入しない独自の工夫を凝らす。
NECの「ShieldPRO FC-N22A」は低電圧版プロセサを搭載することでファンを不要にした。プロセサやメモリーの熱はヒートパイプ経由でPC内部に拡散するほか、ボディ全体を使って排熱するという。「ボディにマグネシウム合金を採用し、衝撃に強くしたほか放熱板の役割も果たすようにした」(NEC 制御システム事業部 制御端末事業推進部 グループマネージャー 加藤雅彦氏)。ナセルが販売する「Rocky CM8」もマグネシウム合金を採用し、耐衝撃と排熱効果の両立を図る。
パナソニックの「TOUGHBOOK CF-31」はファンを搭載しながらも、内部構造の工夫で水やホコリの侵入を防ぐ。「ファン内部にある空気の通路を狭く長くしたほか、立体の迷路のような構造にすることで侵入を防止する」(パナソニック 広報)という。ファンでPC内の熱を効率よく排気できるため、発熱が高くなりがちな高性能プロセサの搭載を可能にしている。
防塵/防滴の目安となるIP表示
では実際にどの程度までホコリや水の侵入を防げるのか。その目安として堅牢PCの多くが「IP(International Protection)」と呼ぶ規格に準拠し、どのような状況まで耐えられるのかを示している。
これはIEC(国際電気標準会議)やJIS(日本工業規格)が定めた規格で、固形物や水の侵入を防ぐ程度を等級で明示する(図1)。例えば「IP65」なら粉塵の内部侵入を防げ、水を直接かけても動作に影響しないことを表している。ニコン・トリンブルの「Trimble Yuma」はIP67に準拠。「1メートルの水深に30分間浸しても動作する」(ニコン・トリンブル 特販営業部 中澤博之氏)という。
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