[青木顕子のスウェーデンIT通信]

iPadはクリスマス商戦に間に合うか?

青木顕子のスウェーデンIT通信 Vol.3

2010年12月1日(水)青木 顕子

北欧の国スェーデンのIT事情をレポートする本コラム。今回は、エンタープライズ分野として大手ITメディア記事に見るERPの最新事情を、そしてコンシューマー分野としてiPadの話題を取り上げてみよう。

スウェーデンのERP事情

現在、スウェーデンで流通するビジネスアプリケーションには、どのようなものがあるか。いわゆるERPパッケージとしてくくられる主要な製品を列挙してみると、Agresso(UNIT4)、Epicor(Epicor Software)、IFS Applications(IFS)、Lawson M3(Lawson Software)、Microsoft Dynamics(Microsoft)、Monitor ERP(Monitor Industriutveckling)、NetSuite OneWorld(NetSuite)、Oracle E-Business Suite(Oracle)、SAP ERP(SAP)、Visma Software(Visma)など、20以上ある。

Gartner Group、EMA、OvumといったグローバルなIT調査会社も多く存在する中、今回はスウェーデン国内でビジネス誌やIT誌の分野で目立つ存在、Exidoのレポートに注目してみよう。同社は、スウェーデンのみならず、ノルウェーやデンマーク、フィンランドに拠点を置く、北欧マーケット専門のアナリスト集団だ。そのExidoが今秋、国内最大のITメディアであるComputer Swedenの「ITトレンドスペシャル」に発表した記事が目にとまったので、内容の概略を以下に紹介しよう。

不況がニッチプレイヤーを後押し

2008年に高騰したスウェーデンのビジネスアプリケーションマーケットが、このところ低迷状態に陥っている。ビジネス案件の3件のうち2件がキャンセルになる有り様だ。不景気と、企業に広がるビジネスアプリケーションへの不信感を否めない。

実際、大企業のうち今後2~3年にビジネスシステムへの新規投資をすると答えたのは、わずか4パーセント。これまでに、一旦はITプロジェクトをスタートしたものの途中で予算が膨らみ中断を余儀なくされたという経験を持つ経営層には、ビジネスシステム導入プロジェクトに踏み出すことを躊躇する向きも多い。

こうした大規模・複雑なシステムへの抵抗感は、決して必要な知識の欠如だけが原因ではなく、「全体像がつかみにくい」というシステムへの不安に起因しているようだ。

この3年間で、大規模で複雑なビジネスアプリケーションが不況の煽りを大きく受けた。かつて市場トップの座にあった大手ERPベンダーが、今ではトップ6からも姿を消していることが象徴している。逆に、低迷期にありながらも追い風を受けたのが、対象を絞り込んで専門性の高さを前面に打ち出すベンダーだ。Agresso、IFS、Monitorなどが代表例である。また、Dynamics(Microsoft)やJeeves(Jeeves Information Systems)のように比較的小規模なシステムも、導入済みの大規模システムへのアドオンとして大企業に検討され始めた。

こうした変化は、不況の中で顧客のニーズがシフトした結果と言える。「機能が豊富な大規模システム」より、「プロセスの組み込みが比較的スムーズにいき、柔軟性を備えた標準システム」という視点を重視するようになったのだ。

2010年、国内の市場規模は15億スウェーデンクローナ(約180億円)で、そのうちライセンス売上は3.6億クローナ(約44億円)だ。09年比の成長率は微々たるもので、しばらくは、このトレンドが続くと予想される。

iPadの正式リリースを待ちわびる人々

11月も終わりに近づき、スウェーデンでもクリスマス商戦がスタートした。この時期、こちらでは日の出が8時で、日の入は15時ころとなる。光を浴びる時間が極めて短いこの国では、クリスマス(12月25日前後あわせて約1カ月半)への思い入れ、入れ込み方は半端ではない。日本のお正月に匹敵する盛り上がり、いやそれ以上だと思われる。

さて、ドイツやイギリスなど、ヨーロッパ各国でとっくに販売されているiPadだが、スウェーデンに関しては、いまだにAppleから公式発表がないままだ。周囲で得意顔でiPadを抱える人々を見かけるが、これはインターネットまたは旅行先で購入したものである。中には、旅費にiPadの購入費を加えて、旅行先を選ぶ人までいる過熱ぶりだ。

そんな中、インターネットでIT関連メディアを展開するIT24が、アップル国内販売代理店に聞き取り調査を実施。その結果として、iPadスウェーデン語版がどうやらクリスマスには投入される見込みであるという記事を11月15日に発表した。これを読んだ人が続々とコメントを投稿し、記事掲載24時間内にその数は30件以上に及んだ。

iPadに先駆けて、国内ではSamsung Galaxy Tabがすでに投入されており、ユーザー評も好意的だ。その一方で、iPadを待ち焦がれている消費者の熱い思いは募るばかり。2010年も残すところあと僅か。はたして今年のクリスマスプレゼント賞のトップにiPadは輝くのか!? その結果は、またあらためてお伝えすることにしよう。

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