大震災を機に、ITを使ったテレワークの価値が見直されているようだ。BCP(事業継続計画)の観点のみならず、“通常時”にも真価を発揮させるには、先行企業のベストプラクティスに倣うことが欠かせない。
3月11日に東日本を襲った巨大地震は、ご存じのように想像を絶する甚大な被害をもたらしました。東京都内に住み、直接的な被害に遭わなかった私は、報道で知る被災地での惨状に心痛し、悲しい被害がこれ以上広がらないことをただ祈るばかりです。被災された皆様、ご家族やご友人など大切な方を亡くされた皆様に、心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。そして、被災地や福島原発事故の現場で、連日連夜の復旧作業にあたっておられる方々に深く感謝を申し上げます。
今もなお余震が続くなか、交通機関のストップ/遅延や計画停電の実施に伴って、今回、在宅勤務を初めて経験する方はかなりの数に上ると思います。テレワークと呼ばれる、ITを駆使しての遠隔業務は、これまで主としてオフィスワーカーの生産性向上やワーク・ライフ・バランスの観点からの推進が叫ばれてきましたが、今回のような緊急事態において真価を発揮するものでもあることは言うまでもありません。
総務省発行の年次リポート「通信利用動向調査」(2009年調査版)によれば、国内企業のテレワーク導入率は、2007年調査の10.8%から2009年調査では19.0%と、2年間で約2倍になりましたが、それでも全体の2割に達していません。導入目的で見ると、半数強の51.5%が「勤務者の移動時間の短縮」を挙げ、「定型的業務の効率性(生産性)の向上」(41.8%)がそれに続きます。そして、「非常時(地震、新型インフルエンザ等)の事業継続に備えて」という目的を挙げた企業は39.6%で、2007年調査の19.2%から大幅に伸びています。今回の大災害が反映される2011年調査(2012年4月頃公表)では、おそらくこれが導入目的のトップになっているでしょう。
通勤/移動時間の削減など時間の有効活用、業務生産性の向上、オフィス・コストの削減、地域を越えた有能な人材の確保など、テレワークの推進にあたっては以前よりさまざまなメリットが謳われてきましたが、今回のような緊急事態に伴う不可避のニーズほど導入を強く推し進める要因は存在しないはずで、今後、多くの企業において、有事に備えてのクライアントPC/モバイル・デバイスのセキュリティの徹底や、VPNなどリモート接続インフラの整備が進んでいくものと予想されます。
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