最新技術を適材適所に使い分け “第3のデータ”からビジネス価値を ITシステムから社会インフラまで広く手がける日立製作所。社会的、公共的な側面も併せ持つビッグデータについて、多角的な視点からアプローチできるベンダーの1社だ。同社の山口俊朗氏の講演では、すでに実践している事例も織り交ぜながら、企業がビッグデータを活用する意義を訴えた。
情報・通信システム社
ビッグデータソリューション部担当部長
山口 俊朗 氏
「ハード価格の低下とデータ処理能力の向上で、価値を生むかどうかが分からずに捨ててきたデータを活用する道が開けた」─。価値を生むデータを第1、価値を生まないデータを第2とすると、現時点で用途が分からないものは“第3のデータ”。山口氏は、ビッグデータ活用の意義は、こうした第3のデータから新たな価値を創造し、競争力につなげることにあると主張する。
ビッグデータ活用による価値創造で、まず必要となるのは、「データのライフサイクル」という考え方だと同氏。収集、蓄積・検索、集計・分析と大きく3つに分けてとらえ、最適なコストで処理し、常に利用できるようにする。収集については、データを蓄積せずに発生と同時に集計・分析するストリームデータ処理技術が求められる。「これは、従来のITシステムが膨大なデータを蓄積してから集計・分析する“大脳系処理”とするなら、データを逐次処理する“反射神経系処理”と呼べるもの」(山口氏)。
蓄積・検索については、インメモリーデータグリッド技術や新しいデータベース技術がある。日立のインメモリーデータグリッド技術の特徴は、アクセスの高速性、キーバリュー型のシンプルなデータモデル、アプリケーションからデータに透過的にアクセスできること、耐障害性の高さなどだ。また、データベース技術は、数億件以上の生データをそのまま扱うことができるほど性能が向上している。
集計・分析については、オープンソースの「Hadoop」を利用した分散処理がカギになるが、日立ではこれ以外にも、COBOLやJavaなどで作られた既存資産を活かしたまま基幹バッチに適用できる技術を持つ。グリッドバッチと呼ばれるもので、並列分散処理を一元管理して運用を容易にするほか、データ量に応じてスケールアウトさせることも可能だ。
顧客ごとの併買分析やSNSデータ分析が実践期に
講演ではインフラ施設(モノ)への適用、顧客サービス(ヒト)への適用という観点から4つの事例を紹介した。
インフラ施設については、まず、英国に納入した鉄道設備における保守サービスを説明。車両に数多くのセンサーを取り付け、ありとあらゆる情報をリアルタイムに収集。そのデータを部品管理など複数のシステムと連携させて、今後の課題を数理分析する。もう1つは、データセンター内にラック単位で温度センサーを設置し、そのストリームデータを分析して空調を制御する事例だ。局所的な温度異常を検知し、即座に対応して過冷却を防ぐことで空調費の低減を図るものだ。
顧客サービスの事例ではまず、小売業におけるデータマートレスでの高速検索に言及。日次集計だったものを時間帯別に集計できるようにしたほか、どの顧客がどの商品を併買しているかといった詳細分析も具現化しているケースを紹介した。4つ目は、SNSデータ活用による需要予測の事例。つぶやきを分析して、商品の売れ行きを予測。どの時点で在庫を確保し、プロモーションを打てばよいかを判断することに役立てているという。
山口氏は「ビッグデータは発展途上の分野だが、新たな価値創造に向けた期待は大きい」と強調し、講演を締めくくった。
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株式会社 日立製作所 情報・通信システム社
http://www.hitachi.co.jp/products/it/bigdata/
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