顧客分析をスタートとした『個』への対応が 競争優位の獲得につながる ビッグデータの戦略的な活用は、世界の多くの経営者が最優先課題の1つとして認識し、積極的な取り組みを開始している。しかし、実際にそこから有益な洞察を導き出し、競争力を獲得している企業は、現状ではそれほど多くない。その原因は、体制やアプローチにある。ビッグデータ活用を目指す企業が着手すべき分野と実行ステップを、日本IBMの塚本眞一氏が解説した。
理事 ソフトウェア事業
インフォメーション・マネジメント事業部長
塚本 眞一 氏
インターネットの普及やスマートフォンの登場に後押しされた「コンシューマライゼーション」の波によって、10年前には考えられなかったスピードで変化が起こっている。顧客の嗜好やライフスタイルの多様化、トレンドの変化などが、ビジネスにおいて無視できない要素となっているのである。
日本IBMの塚本眞一氏は、「企業が顧客と密接なやり取りをすればするほど、データが増えていく。逆に言えば、データが増えるか増えないかが、企業の成功を裏付ける1つの指針にもなっている」と会場に訴えた。そうした中で注目され始めたのが、膨大で不確実なデータから新たな価値を引き出す、ビッグデータへの取り組みである。
具体的にどんな形で活用が進んでいるのか。塚本氏は、2012年11月16日に再選を果たした米国のオバマ大統領の選挙戦略を例に採る。オバマ氏陣営は、全米に分散している支援者リストを18カ月かけて統合し、分析した。その結果、「スポーツ用多目的車(SUV)を所有し、最近ビジネススーツを購入した50歳以上の白人男性の場合、居間に聖書があれば共和党支持、現代絵画を飾ってあれば民主党支持の確率が高い」という相関関係を発見。これに基づいた選挙活動を展開し、勝利を掴んだというのである。
データ分析スキルの蓄積と人材育成が最優先の経営課題に
ビッグデータに注目が集まっているものの、まだ70%以上の企業が準備・検討段階にあるとも指摘。そんな企業に向けて塚本氏は、「顧客分析をスタート地点として、『個』のレベルで対応することが利益につながり、競争優位の獲得につながる」とアドバイスを加えた。
この取り組みを支援するため、IBMではビッグデータ・プラットフォームを用意している。大規模な非構造化データを分析する「Hadoopシステム」、超大量データのリアルタイム分析を実現する「ストリーム・コンピューティング」、既存の構造化データを統合的に分析する「データ・ウェアハウス」、SNSデータやマシンデータに最適な分析モデルを提供し、相関パターンを発見する「アクセラレーター」、データの自由な探索を可能とする「可視化と検索ツール」などから構成されたトータルなソリューションである。
さらに塚本氏は、ビッグデータ活用への第一歩を踏み出すため、次のようなシナリオを提示した。「まずは、社内に分散した業務システムのデータを統合し、分析可能な環境を構築すること。その基盤上で、これまでにない情報ソースを活用することで顧客に関する視点を広げていく。次のステップとして、膨大なマシンデータをリアルタイムで解析し、早期の予測と素早いアクションの実現を目指す。一方、ソーシャルメディアなどのあいまいな情報から、精度の高い洞察(気付き)を獲得していくことに挑むことも肝要だ」。
もちろん、無数にある変数(データ)の間から有益な相関関係を発見することは容易ではなく、適用する分析アルゴリズムも多岐にわたる。塚本氏は、「データ分析の効果を最大限に享受するには、プラットフォームの整備と同時に、スキルの蓄積と人材育成が最優先の経営課題になる」と強調し、IBMとして幅広いサポートを提供していく考えを示した。
お問い合わせ
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/software/jp/data/bigdata/
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