浮川和宣氏と浮川初子氏。ご存じの通り、ジャストシステムの創業者であり、「一太郎」や「ATOK」といった日本語ソフトの開発者である。2009年にジャストシステムを離れた後、2人は仲間と一緒にMetaMojiという新会社を設立し、スマートデバイスのアプリ「Note Anytime」を作り上げた。
名前が示すように、いつでもどこでも、どんな方法でも、メモをしたりイラストを描いたりできるアプリだ。手書きによる文字入力やその認識はもちろん、PDFや写真などの画像を取り込んで注釈を入れることができる。紙とペンの感覚をスマートデバイスで再現した、まさしく”ノート”である。個人ユースだけではなく、ビジネスユースにも使える。優れたアプリなのだが、それ知らせるために取り上げるわけではない。お伝えしたいと思ったのは、同社の姿勢、あるいは志である。
それが表れているのが、マルチデバイス対応だ。MetaMojiはiOS版に加えてWindows8版、この3月にはAndorid版を提供し始めた。会社はまだ小さく、資金力も十分とはいえないから、当面はiOS版に集中して強化を進めるのが得策に思える。しかし浮川氏は、こう話す。「利用者にとっては、いつでもどこでも使えるのが理想。そうである以上、主要なデバイスをサポートするのは当然」。
しかし案の定というか、Andorid版の開発は困難を極めた。大きな問題が、手書きで文字や線をスムーズに描けるかどうか。スマートデバイスの性能が一定以上なら問題ないのではと思うが、そうではないという。「最初は分からなかったが、CPUが高性能でメモリーも潤沢、一方でバッテリーが長持ちする機種がくせ者。電力をCPUなど回しても大丈夫なように、見えにくい部分、つまりタッチディスプレイのセンシング周波数を落としている」(浮川氏)。調べていくうちにこんな事実が判明した。
それでも利用者のことを考えると、こうした機種やスペックが低い機種の操作性問題を放置するわけにはいかない。浮川氏らは実際に様々な機種を試しながらソフトを改良する一方で、機種毎の操作性をUstreamの動画や一覧表の形で公開している。その機種数は、なんと163に及ぶ。
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