訴訟に至るようなITトラブルを防止するためには何を行うべきか。シリーズ企画として、第1回は、スルガ銀行と日本IBMの訴訟判決を取り上げた。今回は、要求提示のあいまいさにより訴訟になった事例を取り上げ、ITプロジェクトには厳格な要求定義、もしくはそれに代わる何らかの仕組みが必要であることをお伝えしたい。
今回の事例は、請負型のシステム開発において、発注者が追加注文の支払いを拒否。それに対しベンダが、追加注文と評価されるべき部分の報酬を求めて請求を行い、認容されたものである(東京地判平17・4・22)。判決が平成17年といささか古い事例だが、内容は現在も通用するし、IT Leaders読者に知っておいて欲しいケースである。プロジェクトの経緯は以下の通りだ。
発注者は書籍の管理、配送を行う会社であり、書籍在庫管理システムを15年前にオフコンに切り替え、その後、個別の出版社の事情に対応するプログラムを追加開発していた。
同社は「西暦2000年問題」に対処することを主目的に、同システムのパソコンサーバーへの切り替えを計画し、開発を今回の訴訟相手とは異なるベンダAに、いったん発注している。ここで問題となるポイントがある。
ベンダAは、発注者が現行のオフコンで追加開発した個別出版社対応機能を、切り替えの対象外として提案していたのである。その理由は訴訟資料には記されていないが、ここでは事実関係の記述に留める。
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