日本市場では高評価なのに世界市場には通用しない製品やサービスを「ガラパゴス」と呼ぶ風潮が定着して久しい。日本の常識と世界の常識に大きなギャップが生まれている。同様のことは、企業のIT戦略や情報システムでは起こっていないとは断言できないのではないだろうか。こうした観点から、2020年を見据えた「グローバル企業のIT戦略」を、今回から何回かに分けて見ていく。第1回はクラウド市場(マーケット)を取り上げる。
IT戦略における日本と世界の差異を見極めるためには、いくつかの観点が挙げられる。今回取り上げる、「市場」はその一つだ。このほかに、「スケールの差」や「ITのとらえ方の違い」「専門性への取り組み」「国民性」「組織」などがある。これらについては、次回以降、順を追って取り上げたいと思う。
IBMやOracleよりも外資系の雰囲気が漂う会社がある
本題に入る前に、なぜ筆者がグローバルなIT戦略に触れられるのか、その背景をお話ししたい。筆者は、IT業界に入って早くも29年が過ぎた。米IBMと米オラクル(Oracle)という外資系企業に長く勤めたが、現在はディメンションデータ(Dimension Data)という少し変わった外資系企業に属している。
ディメンションデータは、グローバルにICTサービスを展開する事業者だ。最近は、そのサービス内容も、いわゆるクラウド化に舵を切っている。日本法人の親会社はシンガポールにあり、グループ会社の拠点は南アフリカにある。ただし、株式は100%、NTTの持ち株会社が持っている。地球をぐるりと回って日本に戻ってくる感じだ。日本IBMや日本オラクルと比べても、筆者の経験の中では最も外資系の雰囲気が漂っている。
具体例の一つが人材の多国籍化である。2年前に入社した時も、日本のオフィスに予想以上に多国籍のスタッフが働いていたので驚いた。中国や、韓国、インド、イギリス、アメリカ、オーストラリア、フィリピンなどの出身者が何の違和感もなく、日本のオフィスにいた。
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