IBMメインフレームはクラウド、モバイルを取り込み、原子ストレージや量子コンピューティングを可能にする方向に進化する─。日本IBMは多数の顧客を招いて「System/360」の50周年の記念イベントを開催。メインフレームの将来性をアピールした。果たして、その中身はいかなるものだったのか。
最後に「IBM Mainframe 50」に戻ろう。このイベントではIBM側の話だけではなく、ユーザー企業3社がスピーチを行った。三井住友海上火災保険・IT推進部長の柳瀬俊也氏、日本アクセスの常務で情報システム部長を兼務する占部真純氏、ホクレン農業協同組合連合会・経理部主任技師の鈴木徹治氏の3人である。各氏とも異口同音に、IBMメインフレームを長く使ってきていることや、今後もIBMメインフレームを使い続けたいこと、あるいは一度はオープン系への移行を考えたが結局はメインフレームに戻ったこと、メインフレームとIBMへの期待などを語った。50周年という祝いの席であることを割り引いても、IBMメインフレームへの信頼を感じさせるスピーチだった(写真6)。
写真6 ゲストとして登壇した日本アクセスの常務で情報システム部長を兼務する占部真純氏
従来のトランザクション処理に留まらず、ここで見てきたクラウドやモバイル対応、さらに原子ストレージや量子コンピューティングへと向かう技術開発、仕方なくと言うより意図を持ってメインフレームを利用し続けているユーザー企業の話を聞くと、IT基盤としてメインフレームもありなのではと思ってしまう。何しろ大きなネックの1つである価格も、2013年9月に登場した「IBM zEnterprise BC12」は買取で790万円からと破格なのだ(/articles/-/10590)。
だからといって脱メインフレームを果たした企業がもう一度、メインフレームに戻る必然性はないかも知れない。しかし少なくともIT基盤の行方や方向性を理解する上で、あるいは、ある種のベンチマークとしてIBMメインフレームをウォッチし続ける必要はあるだろう。スケールアウトだけが唯一の解ではないし、「次世代のハードウェア技術によるスケールアップ」(Anzani氏)はシンプルさで有利。クラウドの次のコンピューティングがどうなるのか、それを示すとも考えられるからだ。