電子政府の推進などを筆頭にICT活用を積極的に進める韓国。現地メディアの報道から、韓国の官民の最新動向をピックアップして紹介する。
国家情報化予算はビッグデータと
モバイル、セキュリティに集中
──デジタルタイムズ 2014年3月10日
今年の国家情報化予算は4兆9186億KRW(4746億円)。最近のトレンドであるビッグデータ、モバイル、セキュリティ向けを強化する──。国家情報化を管轄するため2013年に新設された未来創造科学部は、こんな計画を明らかにした。
内訳を見ると、中央行政機関(51機関)の786事業に3兆9404億KRW(3800億円)、地方自治団体の5990事業に9782億KRW(944億円)の予算をつけた。2013年に比べ、中央行政機関の予算は56事業(7.7%)、9427億KRW(909億円、31.4%)が増加。自治体は253事業(4.4%)、469億KRW(45億円、5%)の増加となっている。
テーマ別では、ビッグデータやクラウド、IoT(Internet of Things)などITの新技術の普及と産業間の融合促進、モバイル環境への移行拡大、情報セキュリティの強化、の3分野に重点投資される。投資額で見ると、ビッグデータに35課題で665億KRW(64億円)、クラウドコンピューティング事業に33課題1252億KRW(120億円)、IoT事業に17課題516億KRW(49億円)となっている。これらはIT新技術の普及や産業間の融合促進分に位置づけられる。
モバイル環境では「公共分野モバイルサービス提供」に関して55事業119億KRW(11億円)、「モバイル電子政府基盤およびアプリ生態系などインフラ造成」に18事業215億KRW(20億円)、「次世代モバイル分野技術開発」で2件346億KRW(33億円)など。合計額は680億KRW(65億円)になる。
セキュリティの強化関連では、「情報保護」、「インターネット文化造成」、「デジタル格差解消」に関連する事業で合計3020億KRW(291億円)を投資する。一連の予算措置に対し、「既存の情報システムの保守比率が高く、新規投資が少ない点に改善を要する」との指摘もある。
Hadoop技術者の争奪戦が過熱し
年収2億KRW(1900万円)も
──韓国日報 2014年3月12日
あるビッグデータ関連企業に勤務するA氏(38歳)には、最近、ヘッドハンターからの電話が頻繁にかかってくるという。A氏は「転職の意思がないことを伝えているにも関わらず、Hadoopに関する業務経歴や技術をしつこく聞いてくる」といい、「エンジニアの間では少しだけのHadoop経験でも年収2億KRW(1900万円)をもらえるとの噂もある」と語る。
このように韓国ではHadoop技術者の争奪戦が過熱している。Hadoopプラットフォームベンダーに務めるグォン氏は、「ビッグデータ時代になり、企業の関心は膨大なデータを経済的に活用することに向いている。データウェアハウス(DWH)など高価なシステムを使用した場合、数億ウォン(数千万円)を軽く超える費用がかかる」とし、「Hadoopはオープンソースなので費用が少なく、設置の敷居も高くないので、関連企業には魅力的」と語った。
LinkedIn、Twitterなど海外の有名IT企業がHadoopの活用で成功していることも大きい。これに刺激されて韓国内の企業もHadoop専門家の確保に必死なのだ。人材ビジネスの関係者は「通信や電子、流通、金融などの大手企業からOracle、IBMなどの海外企業、大手SIerまで、Hadoop専門家を紹介してほしいとの要請をたくさん受けている」といい、「大手企業の採用情報にもHadoop関連経歴は最高優待事項」と伝えた。
しかし韓国でHadoopが「分かる」といえるエンジニアは今も100名程度。ほとんどが大手ポータル企業やHadoop関連の開発企業に属しており、ヘッドハンティングのターゲットになっている。
専門家はこの無差別的なHadoopエンジニアのスカウトだけでビッグデータ活用能力が向上するわけではないと話す。グォン氏は「ビッグデータは以前から存在していたが、活用できなかったデータだ。そこから新たな価値を生み出すには、自社の事情とビジネスを知りつくす内部のエンジニアがコントロールをすることが核心だ。そのためには既存データを対象に試行錯誤をしながら、データの価値が分かるよう教育していくことが重要である」と指摘する。
2年にわたり、Hadoopを利用したデータ解析基盤を構築したGSホームショッピングの金氏も同意見だ。「たとえ時間がかかっても新規事業アイデアを発掘することができる内部人材を養成し、彼らにHadoopを活用させることが効果的である」(金氏)。
「遠隔医療法案」が国会に提出され
6カ月間の実証実験を実施
──ソウル新聞 2014年3月26日
大韓医師協会の診療拒否を触発させた「医師-患者間の遠隔医療許容法案」が25日、国務会議を通過した。昨年10月に立法を予告してから5カ月ぶりのことである。
この日に国務会議を開いた政府は、遠隔医療の導入を骨子とする医療法の一部改訂法律案を審議し、議決した。改定案は医師会と政府の合意により4月から6カ月間、遠隔医療の実証実験を実施。その結果を見て案をさらに改善する予定である。
この法案は、医師が再診患者を遠隔診療しながら持続的に観察し、相談や診断・処方が行えるようにするもの。現状では遠隔診療は、遠隔地にいる医療関係者に対し医師が医療知識や技術を支援する「協力診療」しか許容されていない。これに対し法案では、高血圧、糖尿病などの慢性疾患、島などの居住者、体が不自由な老人・障害者、特定疾患者を対象に遠隔医療を許容する。
全国民を対象としないのは、遠隔医療の乱用で過剰診療の可能性があるためである。また大手病院に許容すると患者が集中する懸念があるため、小規模の病院のみが実施可能とした。ただし手術後に身体に付随した医療機器の継続的な検査が必要な患者や、刑務所の囚人、軍人など医療機関の利用が制限されている患者の場合は、大型病院も実施可能にした。
保健福祉部(厚生労働省に相当)の関係者は、「実証実験後に法案が修正されたとしても、遠隔医療対象規定など重要な内容までは変わらない」と語った。長い騒ぎの後で改定案が国会に提出されたが、医療系と一部の市民団体が反発しており、国会の本会議通過にはまだ遠い。改定案は同実証実験が終わる9月後半から国会で本格的に議論される見通しである。
機密文書を除く政府の決裁文書
インターネットで自動公開へ
──韓国日報 2014年3月27日
個人情報と安保関連文書などの非公開情報を除き、局長級以上の決裁文書は情報公開請求なしでもWeb上で確認できる──。安全行政部(総務省に相当)は、3月28日から決裁文書の原文情報公開サービスを公開ポータル(open.go.kr)で提供すると明らかにした。
公開の対象は青瓦台と国家情報院を除く中央公共機関と市、道(県に相当)、69市郡区の「公開可能な」局長級以上の決裁文書である。公開の可否は、決裁起案者と決裁者が「公共機関の情報公開に関する法律(情報公開法)」に基づき判断する。
同法によると、個人情報、営業秘密、安保&外交に関する事項、裁判中&捜査中の事項、国民の安否にかかわる事項、投機に悪用される事項、非公開として規定している事項などの文書は公開されない。ただし原文公開サービスで部分公開・非公開として閲覧できない決裁文書は、利用者が情報公開請求をすることで公開可否が決定される。
同部は、局長級以上の決裁文書の約1000件が毎日Webに公開されると予想している。長官と次官、道知事(県知事に相当)の決裁文書も別途ソートして提供。さらに文書は10大テーマごとにも分類され、利用者が望む文書を簡単に閲覧できるようにした。
決裁文書の原文公開は昨年に情報公開法が改定されてから実施されている。それ以前は決裁文書を閲覧するためには利用者がその文書の存在を把握してから情報公開請求をする必要があった。
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