[“聴き手の心を動かす”プレゼンテーション]

「スライドはシンプルに」─プレゼンテーション21のポイント 企画・制作編(3):第4回

2014年6月5日(木)永井 一美(オレンジコミュニケーション・サポート)

今回は「企画・制作編」の最後となる【Point10】として、スライドの作り方についての注意点を解説する。ついつい過ちを犯しがちなところなので、じっくりと読み、理解を深めてほしい。

 2つめは、「文字を目に届ける
みなさんもセミナーなどで経験しているだろう。「見えないと思いますが…」と説明するプレゼンターが多い。おかしなことだ。

見えないスライドに意味はない、ストレスなだけ

 日本語表現を使わず、シンプルならば、おのずと文字のポイント数は大きくなるはず。元アップル社のガイ・カワサキは「最高齢者の年齢÷2」と言っている。聴き手に50歳の方がいらしたら最低は25pt。60歳ならば30pt。しかし、会場の広さやスクリーンの大きさを考慮しなければいけない。パソコンの画面で説明する場合もあるだろう。要は「見える」こと。文字の大きさだけでなく、環境面の考慮も必要。会場とスクリーンによっては、前席の人の頭で画面下部が見えないことがある。そう考えればそこに重要情報を書くのは避けるべきだろう。

 3つめは、「スライドは1テーマに
1スライドに複数のテーマを書かないこと。聴き手は次のテーマを知ることになり、注意が散漫になる。スライドと語りがシンクロするからこそ、聴き手は集中してそのテーマに聴き入ることができる。

 1スライド・複数テーマでも、アニメーションを利用して進めることはいい。語っているテーマに集中してもらおう。

「スライド」と「印刷物」は別

 「ダメなスライド」を作ってしまう一番の原因は、“スライドと印刷物を共有”していることだ。そもそも、投影し、同じ印刷物を配り、同じことを語る。これは3重の情報提供であり、聴き手に混乱を与えている。集中できない。

 また、聴き手はプレゼンターの話に関係なく、配布された印刷物を読む。人は複数の作業を同時にはできない。先読みし、インパクトも薄れる。“語りに集中しなくていい自由”を与えていると言っていい。

 しかし、資料配布を求められる場合もある。このときも工夫しよう。大切なことは「“語り”と“スライド”のシンクロ」である。

 では、なぜスライドを使うのか。その意味は視覚効果だ。“映像やグラフを語る”ことはできない。視覚から得る情報の効果は大きい。老子はこう言っている。「聞いたことは忘れる。見たことは覚える。やったことは解る」と。しかし、文字だけのスライドが記憶されることはない。

 スティーブ・ジョブズのiPhone発表プレゼンをぜひ見てほしい。スライドは実にシンプルだ。

(出典:YouTubeより https://www.youtube.com/watch?v=L0XeQhSnkHg

 再度になるが、「スライド」と「印刷物」を共有することこそ「ダメなスライド」の要因。ジョブズのスライドを真似すべきだということではない。「プレゼンターの語り」が大切であり、それに集中してもらわなければいけない。「情報の多いスライド」や「印刷物」はそれを阻害してしまう。補完し、シンクロする。また、記憶に残る。そうしたスライドを制作しよう。

 次回は「予行編」から続ける。


永井 一美 氏

オレンジコミュニケーション・サポート
代表
永井一美氏


日本システムウエア入社以来一貫してITに従事。入社当時、日の丸コンピュータとして電電公社(現NTT)、富士通、NEC、日立製作所の共同開発である「DIPSプロジェクト」に携わる。その後、システムインテグレーション部隊のマネジャーなどを歴任。「ソフトウェアの可能性」を追求すべく、“2000年問題”収束後の2000年6月にアクシスソフトウェア(アクシスソフトへの社名変更後、現在は合併によりオープンストリーム)に転職、製品事業の立ち上げに尽力し、2006年に代表取締役社長に就任。MIJS(Made In Japan Software Consortium)理事、日本IT特許組合の理事長なども務める。2011年9月、アクシスソフト代表を退任。現在はオレンジコミュニケーション・サポートとしてプレゼンテーション、ボイストレーニング、タイピング研修を事業として活動している。「ビジネス経験の中で、プレゼンテーションは核だった」とは本人の弁。

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