IT資産管理とは、ソフトウェアのみならずハードやネットワーク、データなども含めた資産すべてを対象とし、うまく運用することで無駄を排除しリスクをコントロールすることに目的がある。ところが現実には、不正コピーしたソフトの利用を抑止することのみに重きを置いた取り組みが少なくない。今一度、本来の意義をとらえ直す必要があるのではないか。
ソフトウェアの著作権保護活動を進めているBSA(ビジネス・ソフトウェア・アライアンス)の日本支部が活動を始めた1992年には、日本企業で一人一台の情報端末を使うような利用形態はほとんどなかった。筆者はその年に200人の設計部門メンバーに一台ずつのMacintoshを配布しネットワークで繋ぐ新しいワークスタイルを展開していた。
この時、基本ソフト(OS)はともかく、パッケージソフトウェアを人数分買う予算など部門にはなく、同時使用者をコントロールし著作権を侵害することがない「KeyServer(キーサーバー)」という仕組みを導入してライセンス数を極限までに抑制して使っていた。この仕組みは現在でもフローティングライセンスなどに残っている。
BSAが違法コピーの調査を始めた2004年くらいになると、多くの企業が一人一台の端末を導入し、ネットワークで情報共有しながら仕事をするスタイルが一般的になった。当然ながら、日常的に使うソフトウェアは、様々なライセンス契約に応じて利用者の数だけ購入しなければならない。
こういう環境になるとコピーによる不正使用が顕在化してくる。BSAの調査報告によると日本の2003年の違法コピー率は29%だった。10年後の2013年には19%と10%も改善し、正規利用率No.1の米国に肉薄するレベルになっている。合法的なライセンス使用は、国の富裕さや人のモラルとの間に高い相関が認められることが、他国の例を含めて見るとわかる。日本はモラルが高い国と言えるが、それでも使われているソフトウェアの2割は違法コピーソフトである。
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